出会い系ロリババァ

 学友より紹介された出会い系サイトにアクセスしてから二週間が経った。その期間を薫は悶々として過ごしていた。年齢に等しく特定の女性と付き合いを持った経験の無い彼にとって、同サイトが提供するサービスへの期待は連日鰻登りだった。

 そして本日、彼はここ数日に渡ってメールの遣り取りをしていた女性と実際に顔を合わせる約束をしていた。場所は新宿駅西口のロータリー付近。胸に白い薔薇を刺して来いとは、先方よりの恥ずかしい注文だった。

「なんで、薔薇なんだろ……」

 人混みに在って自らの胸に視線を感じるのは自意識過剰でないと彼は思う。

 その人物とは出会い系に登録して初日にメールを受けて以来、既に三桁近い送受信を繰り返している。話題の内容は雑多にあって、学校に過ごした何気無い感懐から、昨今のテレビ番組に纏わる風刺まで多岐に渡る。そんな中で先日のこと、不意に相手より実際に会って話をしないかと誘われたのだった。

 非常に引っ込み思案で女性関係に奥手な彼としては、自ら誘うこと叶わず過ごした数日を前に願ってもみない提案だった。おかげで昨晩に至っては満足に眠ることも叶わず、悶々と一昼夜を文庫本に感けている。

「そろそろ、かな」

 制服のポケットから取り出した携帯電話の筐体を開く。液晶画面に視線を落とせば時刻は午後の五時二十分程度。待ち合わせの時刻は五時半であり、あと十分を切っていた。ちなみに、何分校外で異性と待ち合わせなど初めてのことで、彼はこの場に五時から経ち呆けていたりする。

 徐々に日を長くし始めた四月も中頃にあって、本日は殊更気温も暖かく風も穏やかにある。ついぞ一ヶ月前にコートを羽織っていた時分も懐かしく、特別、外に待つ苦労は無かった。それより、彼の思考の大半はまだ見ぬ文通相手の容姿を妄想することに使われていた。

「可愛い子だと、いいな」

 今に至る過程を昨日、先に出会い系を紹介してくれた学友に説明したところ、返って来たのは「あまり過剰な期待はするなよ」との達観した言葉だった。けれど、何もかもが始めて尽くしの薫にとって、それは土台無理な話だった。

「そう言えば、あの子、何歳くらいなのかな……」

 今日の面会に際しては、相手が彼を見つけるという形を取るのだと言う。だから、彼には事前に出会う相手の容姿が伝えられていなかった。更にはメールの文中にあっても、内向的な性格の薫は女性に容姿を尋ねるという積極的な姿勢を見せることが出来なかった。よって、今にあってもその欠片さえ掴んでいない。分かっているのは相手が女性である、という極めて間抜けな状況だった。

「あぁ……、凄く緊張してきた」

 学校を後とする際には家より持参した歯ブラシで歯を磨き、念には念をと駅近くのコンビニエンスストアで購入した口中清涼剤も使用してある。また、今に纏う制服にしても昨晩にアイロンを掛けていた。気合の入りようは一世一代の見合い前が如くある。

「あと、ちょっと……」

 時間経過と共に、胸に挿した白薔薇が段々と気にならなくなる。それと反比例するように緊張が高まるのを彼は感じていた。力を抜けば両足がガクガクと震えだしてしまいそうだった。けれど、そこまでしても、やはり、年若い彼は女性との出会いに羨望していた。まだ見ぬ未知の領域に希望と期待を持っていた。

 一分、また一分と時が過ぎていく。

 彼にしてみれば今の一分は今朝の一時間にも思えた。

 朝に二度寝へと至る時分に同様の感覚を得られたら、とは、緊張を誤魔化す為の下らない軽口である。そうして、彼はチラリチラリと忙しなく携帯電話の液晶を睨めつつ、待ち人の到来を待った。

 しかし、約束の時刻を十五分過ぎても相手の女性は現れなかった。

「…………」

 最早開きっぱなしである携帯電話の筐体。ディスプレイに表示された現在時刻は午後五時四十五分を回っていた。もしや時刻の設定が誤っているのではないか。そうして確認した回数も既に三回を越える。

 「あまり過剰な期待はするなよ」との学友が忠告が、まさか、このような形で実現するとは、経験に劣る彼は予期していなかった。学校指定の鞄を提げる肩が徐々に下がり落ちてゆく。

「騙された、のかな」

 ポツリ、悲しげに呟く。

 そこまでして、ふと、彼は現実を理解した。

 自分のような凡夫に女性との出会いがあるなど、夢のまた夢なのだと、そう考えるに至ったのだった。そして、それは新たな出会いに浮かれていた一途な彼を、非現実へ片足を突っ込もうとしていた彼を、一挙に現実へと連れ戻したのだった。

 午後六時を回れば夕陽も落ちて当たりも暗くなる昨今。人多く煩雑極まる都市部にあっては、彼と年変わらぬ男女が薄いコンクリートの壁を挟んで、性病に爛れた交尾に熱中しているとも、誠実な生活を全うしてきた彼は知らない。ただ、目の前に舞い戻った日常の感触に虚しくも悲しい感慨を抱くのだった。

「もう、帰ろうかな……」

 予定時刻を二十分だけ回って、彼は呟いた。

 出会い系に興じているのだ、相手にしても携帯電話は持っているだろう。にも拘らず、連絡の一つさえ得られぬということは、そういうことなのだ。この数分間の淡い期待も裏切られて、薫は冷静に結論を出す。

 そうして、来た道を引き返そうと駅のホームへ踵を返した。

 そんな時だ。

 不意に盛大な車のクラクションが鳴り響いた。

「ん?」

 耳障りな音を耳として、一体、何事かと音源を振り返る。

 ともすれば、そこには真っ白に塗られた高級外車が止まっていた。ロータリー内にあって、周囲の凡庸なタクシーより群を抜いて目立つ車体である。前後に長く伸びたそれは、薫も写真の中でしか目の当たりとしたことが無い代物だった。同じセダンでも周囲に並ぶ車と比較して二倍以上の長さがある。

「うわ、リムジンだよ……」

 彼は驚いて反射的に声を上げる。

 周囲の車は急遽乗り込んで来た高級車に散って在り、音源は紛い無く視線の先にある車だった。土地に恵まれない都市部にあっては、リムジンなど滅多に走る事も無い。物珍しさに思わず眺めてしまう。十数メートルだけ離れて、しかし、良く磨かれた車体は彼の姿さえ写して思えた。

 助手席より降りたスーツ姿の男性が、後部座席の扉を恭しく開く。すると、周囲の通行人達が注目する中で、カツン、とヒールのアスファルトを打つ音が響いた。スモークガラスに遮られていた車内より、一人、小柄な少女が地に降り立ったのだった。

「…………」

 その姿は今に降りた高級車の主に相応しく、凛とした顔立ちは寸毫の隙も無く整って、雪も欺かんと白い肌には黒子や染みの一つも見つけられない。腰下まで伸びた黄金色の長髪は艶やかにあり煌びやかにあり、見る者を無条件に圧倒した。そして、キッと釣りあがった眦は、その内に芯の通った性根の真っ当な強かさを感じさせる。身に纏う衣装こそ何処か学校の制服に違いない。しかし、持って余る生来の魅力が、それさえも稀代の匠が繕うドレスを思わせた。

 うわぁ、可愛い子だなぁ。

 それが薫の抱いた初見の感想だった。

 ここで、綺麗、ではなく、可愛い、として彼が感じた故は、全てが相手の身の丈に因る。今に車より降りた少女の身長は傍目にも薫の腹部に達するかどうか。ヒールに因る補正を除けば更に低いだろう。

 とは言え、そのアンティークドールを思わせる類稀なる容姿は、人々の注目を引くに十分なものであった。往来を行きかう者達も皆々、その特異な姿を目の当たりとして歩む足を鈍らせていた。

 そして、そんな周囲の様子を目の当たりとして、ふと薫は自らの平静を取り戻す。あまりジロジロと見つめては相手に失礼だろう。そんな風に現状を理解して、慌てて彼は視線を逸らした。その辺りは彼が小市民の故である。

 そうして、元在った通り踵を返すこと駅の改札口。

 しかし、彼の一歩がホームへ向かい踏み出される事は無かった。

「そこの人、お待ちになって。貴方が薫様ですわね?」

「っ!?」

 不意に名前を呼ばれて薫は背後を振り返った。

 ともすれば、そこには車を降りて彼の元へ歩み来る少女の姿があった。

「胸に白い薔薇……、貴方が倉橋薫様に間違いありませんわね?」

「は、はい……、そう、ですけど……」

 ツカツカと大股に歩み寄って来る少女を前として、薫は身を固める他に無かった。何故に相手が自らの名前を知っているのか、彼は全く理解が出来なかった。そして、往来より向けられる無数の好機に染まった視線が恥ずかしかった。おかげで相手は年下の女の子と言うに、精神は恐縮の境地へと至る。

「この度は約束の時刻に遅れてしまい、申し訳ありませんでしたわ」

「え?」

「既に時刻は午後の五時半を回っておりますでしょう」

「…………え?」

 目の前の相手が何を語っているのか理解出来ずに彼は疑問を重ねた。

「ですから、その謝罪をさせて頂きます」

 そんな薫の混乱など知らず、少女は彼の前で深々と頭を下げて見せた。両手を紺のプリーツスカートの前に重ねて、綺麗に腰を折る彼女の旋毛が目前に晒された。その姿を目の当たりとして、誰よりも慌てたのは頭を下げられた本人である。状況を理解出来ずに慌てて声を返した。

「い、いや、何だか良く分からないけど、頭、頭を上げてよっ!」

「この度の私(わたくし)の過失、許して下さいますか?」

「許す、許すから、とりあえず頭上げてよ、僕も困るから」

「そう言って貰えると、とても嬉しいですわ」

 薫は顔を真っ赤にして捲くし立てる。そんな彼の姿を目の当たりとして、少女はニコリと可愛らしい笑みを浮かべた。それがまた妙に胸に響いて、薫は頬の紅潮を一層のこと極めるのだった。

「薫様、この度の機会、私も誠に楽しみにしておりましたわ」

「え、えっと、この度の機会って、一体……」

「もしかして、状況を理解していないのですか?」

「うん、まあ、すみません、理解してないです」

 少女の後を追って、車より降りて来た強面の白人男性が彼女の後ろに二人並んだ。共に値の張りそうなスーツを着ている。身の丈は二メートルに届こうかと言う長身だ。筋骨隆々とした凶暴な体躯が、黒い生地の膨らみからも良く理解出来る。少女と同じ金色の髪を短く刈り込んだ、まるで軍人を思わせる風貌の持ち主達である。

「まあ、確かに、それも全てを伝えていなかった私の落ち度ですわね」

「えっと、それって……」

「つい先々週よりメールの遣り取りをさせて貰っている者です、と言えば理解して下さるかしら。文章中ではヴェロニカとして名乗っていたのですけれど、聞き覚えはありませんこと?」

「あ……」

 そこまでを語られて、薫は初めて目の前の相手を理解出来た。

「君が、あの、ヴェロニカさん?」

「ええ、始めまして、になるのかしら、薫様」

「は、はじめまして……ヴェロニカさん…………」

 あまり過剰な期待はするなよ。

 そんな学友の言葉が脳裏に強く響いて、そして、見事砕け散った瞬間だった。期待とか、願いとか、そんな簡単な言葉では容易に表現出来ない圧倒的な出会いが、今、彼に訪れたのだった。

            ◆     ◇     ◆

「あ、あの、此処って……、その…………」

「あら、既に夕食は終えてしまっていたかしら?」

「いや、夕食はまだ食べてないけど、でも、こんな高そうな店はちょっと……」

 少女の車に乗せられて移動すること小一時間。連れて来られた先にあって、薫は酷く動揺していた。と言うのは、全てが彼を囲う環境に因る。今に二人が座する席は都内でも有数の高級ホテルに置かれた展望レストランだった。

「支払いに関してはお気になさらずに。当初より誘ったのは私ですから、支払いは此方で持ちます。ですから、薫様はお好きなようになさって下さって結構ですわ」

「け、けど、こんな高いところでご馳走になるなんて、悪いよ」

「ふふ、薫様は慎み深いのですわね」

「いや、慎み深いというか、なんというか、慣れてないという感じで……」

「今日は他に人も居りませんから、これと言ってマナーに気遣う必要もありませんわ。ですから、どうか気楽に私と食事を楽しんで頂けないかしら?」

「それは、その…………、はい」

 テーブルクロスの掛かる円卓を間に置いて、少女は彼の対面に腰掛けている。その落ち着いた物腰は、彼女が相応の家の令嬢であることを伺わせた。

 先程まで両脇を固めていた恐面の男達は去って、今の場には二人の他にウェイターやウェイトレスの姿がちらほら見られる程度である。しかし、周囲を囲う煌びやかにして荘厳な装飾は、かの二人にも増して彼を緊張させるのだった。

「そう言えば、薫様はお魚が好きだと仰っていましたわね?」

「う、うん、小さい頃から母親に良く食べさせられていたからね」

「では、本日は海鮮を主に据えて進めるとしましょう。他に、何かこれと言って食べたいものがありますか? 申して頂ければ多少なりとも都合することが出来ると思いますわ」

「いや、まあ、今は特にこれと言って無い、かな……」

「貝や海老は平気ですか?」

「うん、特にこれと言って嫌いなものは無いです、多分」

「まあ、好き嫌いが無いとは偉いですわ」

「そ、そうかな?」

「私は、どうしても茄子が食べられませんの」

「茄子っていうと、あのグニュグニュした感じ?」

「そうです、あの妙な柔らかさが、どうしても許せない領域にありますわ」

「確かに、そういう理由で茄子を嫌いな人って多いよね」

「生ではそれほどでもないのに、火を通した途端にふにゃふにゃとなってしまうのが良くないですわ。同じ瓜科でも胡瓜などはシャキシャキしていますのに、何故に茄子はああなのか」

「じゃあ、麻婆茄子なんかも駄目?」

「そうですわね、それでも濃い味付けであれば、食べて食べられないことはありません。けれど、滅多なことでは食べませんわ。少なくとも進んで食べることはありません。あれは観賞用の植物に違いありませんもの」

「か、観賞用ですか……」

「ええ、あの見事な紫は人の目を楽しませるものに違いありません。しかも、食べるのにこれほど抵抗を要するというに、同じ野菜の仲間と比較して含有する栄養は大したことありませんし」

「まあ、そう言いたくなる気持ちも分からないでもないかも……」

今でこそ何でも普通に食べられる薫である。しかし、自らが目の前の少女くらいの時分には幾つか食べられない食品があった。それを思うと、茄子が駄目だと言う彼女の姿は可愛らしい子供の主張に思えた。

「では、とりあえず夕餉に品を注文すると致しましょう」

 不意に少女が薫より席から多少を離れたウェイターへ目配せする。すると、彼女の仕草を受けた彼は即座に二人の元へと歩み寄ってきた。革靴を履きながら禄に足音も立てず近づいてくる様は流石だろう。

「そう言う訳で、よろしくお願いしますわね」

「はい、承りました」

 少女が言うとウェイターは深々と頭を垂れて頷いた。

「食前酒は如何なされますか?」

「今日は全部任せるわ」

「承知致しました」

「ただ、今日のお客様は特別なので相応にお願いしますわね」

「はい、畏まりました」

「…………」

 そんな二人の遣り取りを、薫は圧巻された様子で眺めていた。

 手元にメニューは無く、夕食の注文は今に多少を口頭で行われたのみである。彼にしても、値の張るレストランでは品書きを出さない、などと言う都市伝説を耳にした事はあった。そして、それが誠に事実であったと今に知る。少女曰く「そういう訳で」何をお願いしたのか、彼にはさっぱり理解出来なかった。

「ところで、薫様、私は薫様にお話しなければならないことがあります」

「な、何かな?」

「それは私が今日に遅刻した原因とも関わるものです」

「君の、……遅刻と?」

「はい」

 不意に語り始めたヴェロニカを前に、薫は彼女の言葉を鸚鵡返しに呟くことしか出来ない。圧倒的な年齢差を隔てても、彼女の毅然とした態度は、彼に僅か緊張を解くことも許さなかった。

「私は本日を迎えるに当たり、薫様の身辺に関しまして色々と調べさせて頂きました。それは住所から始まって家族構成、容姿、学校での評判に至るまで、実に様々且つ多岐に渡る項目です」

「は、はぁ……」

「ですから、先ずはその失礼を謝りたく思うのです」

「それは、なんというか、気づかなかったなぁ……」

「非常に勝手な行いですから、今に薫様より軽蔑を頂いても仕方無いと感じております。ですが、叶うなら、先日までの通り、これからも私とのお付き合いを続けて欲しいと、不躾ながら、私は願っております」

 そうして、少女はスッと静かに席を立つと、その場で薫に深々と頭を下げて見せた。

「あ、いや、別に、気にしてないから、だから、頭は下げなくていいから」

「私の浅慮を許して下さるのですか?」

「う、うん、許す、許すから、だから、それはもう止めて欲しいというか、なんというか。そもそも、僕の個人情報なんて大した意味も無いし、君みたいな立場の人間なら、そも当然だと思うし」

「先の行いに立場は関係ありませんわ」

「いや、だとしても、当人は気にしてないから、いいよ、別に」

 他者の目もあって、薫は慌てた様子で少女に答えた。そんな彼からの言葉を受けて顔を上げた彼女は、ニコリと嬉し気な笑みを浮かべるのだった。細められた蒼い瞳に見止められて、薫の緊張は上限を知らず上昇の一途を辿った。

 本来ならば年下の、それも小学生を思わせる少女に何を思うことも無し。薫はそういった特殊な趣味の持ち主ではない。しかし、目の前の彼女に限っては勝手の違う己が心情を彼は明らかと感じていた。

「では、これからもメールを続けて下さいますか?」

「う、うん、僕なんかで良ければ幾らでも」

「ありがとうございます。とても嬉しく思いますわ」

「あ、いや、此方こそ、君みたいな可愛い子と話が出来て光栄だよ」

「まあ、薫様、お口が達者でいらっしゃるのね」

「た、達者というか、そういうのじゃなくて、ちゃんと本心からだよ」

「そう仰って頂けるなら、仮にお世辞であっても嬉しいですわ」

 ふふふと口元に手を当てて上品な仕草で声を漏らす少女を相手にして、やはり、薫は自らが置かれた状況に混乱していた。

 彼女からメールとして送られてくる文章の数々は、今に語るが通り非常に大人びたものだった。だからこそ、彼は相手を同い年か、若しくは年上の女性だと考えていた。だからこそ、目の前の可憐な女の子は彼の想像した何もかも引っくり返してくれたのだった。加えて、本人を取り巻く環境を考慮すれば、全てが非現実的に映った。

「あ、あの、一つ、いいかな?」

「何かしら? 薫様」

「なんというか、女性に対してこういうことを尋ねるのは非常に失礼だと理解しているんだけれど、その、あの、……君は一体どれくらいになるんだろう? 教えて貰ってもいいかな?」

 肌や髪の色とは裏腹に流暢な日本語を操ってみせる少女の言動に、薫もまた意識して語り掛ける。ただ、それも明らかに緊張から震えて、数多の単語はつっかえつっかえに吐き出された。

「私の年齢ですか?」

「う、うん……」

 尋ねてすぐに薫は肩を恐縮に振るわせる。

 あぁ、やっぱり聞かなければ良かったかも、などと即座に後悔している辺り、彼の小心者が証を垣間見ることが出来る。

「あ、いや、嫌ならいいんだ、ごめん、無かったことにして」

「そう言えば、私は薫様について多くを知っていましたが、薫様は私について殆どを知らないのでしたね。一方的に多くを理解していたが故、その辺りを失念していましたわ」

「なるほど」

「申し訳ありません」

「いや、いいよ、謝らないで」

「本当、薫様に対する私は失敗ばかりで恥ずかしい限りですわ」

「ま、まあ、失敗は誰だってあるものだよ、うん」

「そう仰って頂けると、幾分か救われますわ」

 自らの言葉に一喜一憂してみせる目前の少女に、薫は休み無く鼓動を高鳴らせるばかりだった。表情の変化に富む彼女の振る舞いは、異性との会話に慣れぬ彼にとって、非常に刺激的なものだった。

「それで、私の年齢でしたわね」

「うん」

「このような形(なり)をしていますから、大凡は薫様の考えている通りだと思いますわ。私は今年で十になります。ただ、誕生日が三月末ですので、同世代の者と比べると幾分か幼く映るかもしれませんわ」

「じゅ、十歳だったんですか」

「特に隠していた訳ではないのですが、結果的にそうなってしまいました。もしも薫様が求める出会いと違っていましたら、その、なんというか、私も申し訳なく思います」

「あ、いや、別に、そういう意味じゃないよ、全然っ!」

「ですが、私はまだ子供ですわよ?」

「まあ、確かにそうかもしれないけど、でも、あまり気にならないから」

「本当ですか?」

「う、うん」

 老若男女を隔てぬ携帯電話の普及により、出会い系サイトの存在は幼い子供にも身近なものとなった。そして、小学生を的とした同種のサイトを巡る諸問題は、連日ニュースを賑せる話題となっている。それを思えば十歳という年齢での利用もおかしくは無い。

 勝手な期待を膨らませていた自分が愚かなのだと、薫は昨晩までの自らを省みた。

「やはり、薫様はメールの文章より想像出来た姿と違わぬお方ですわね」

「そう、なのかな? 自分ではなんとも……」

「ええ、とても誠実な方に思えましたわ」

「いやいや、結構適当な人間だよ、僕は」

「ふふ、謙遜なさることはありませんわ」

「謙遜とか、そんなつもりは……」

「なんというか、私からこう言うのも失礼な話かもしれませんが、薫様はとても可愛らしい方ですわ。写真を眺めていた時より漠然と感じてはおりましたが、こうして実際に出会って益々思います」

「か、可愛らしいって、君……」

「そうして頬を赤らめている姿も素敵ですわ」

「これは、その、違っ……」

 突拍子も無い少女の発言に薫の顔は真っ赤だった。

 まさか、七つ八つも年下の少女に可愛らしいなどと称されるとは夢にも思わなかった彼だった。思わず視線を下に落としてしまう。そこでは硬く緊張に握られた拳が、綺麗に両膝の上へ並んでいた。

「そ、それよりも、座って欲しい、かな。なんか落ち着かないよ」

「はい、分かりましたわ」

 再びヴェロニカが椅子に腰掛ける。

 やがて、そうこうしている間に円卓の脇より人近づいてきた。先程に少女より注文を受けて厨房へ詳細を伝えに帰った彼である。手の上には盆が置かれ、古めかしいラベルの貼られたワインボトルとグラスが二つ置かれている。

「食前酒になります」

 そう一言を発して、ウェイターは用意したそれが如何様な酒にあるかを簡単に説明してみせた。しかし、ワインなど過去に飲んだ試しの無い薫は、その一割も理解することは叶わなかった。兎角横文字の地名が多く発せられたことだけ、漠然と耳に感じていた。

 そして、彼が再び去ってから、薫は恐る恐る少女へと問うた。

「あの、ヴェロニカさん」

「なにかしら?」

「僕達って、未成年じゃないのかな?」

 歳の明けにお猪口一杯の日本酒を飲む程度の経験しか持たない彼にとって、手元のグラスに継がれた透き通る赤色の液体は人生初遭遇のワインだった。知識として葡萄から作られるのだと理解しているに過ぎない飲み物である。

「お酒はお飲みになりませんの?」

「普通は飲まないと思うんだけど、どうだろう……」

「ふふ、今日は特別ですわ。此処には煩い者も居りませぬし、今の一時を乾杯致しましょう。そう強いお酒ではありませんから、一杯を煽る程度でしたら大丈夫だと思いますわ」

「う、うん」

「もしかして、お酒は苦手ですか?」

「いや、あまり飲むものでもないから、その、……ちょっと驚いた」

「やはり、薫様は真面目な方ですわね」

「それじゃあ、今日は、その、ありがたく頂くよ」

「ありがとうございます」

 そうして二人は、手にしたグラスを小さく掲げて乾杯と口にした。

 出会い系で知り合った女性に面会を持ちかけられた事が驚きなら、その相手が歳幼い少女であった事も驚きであり、そして、そんな彼女に連れて来られた今に居る場所も驚きに他ならず、今日の全ては薫にとって驚きの連続だった。

            ◆     ◇     ◆

「ところで、なんでホテルなのかな……」

「出会い系とは、そういう使い方をするんじゃなかったのかしら?」

「そ、それは、まあ、違ってないけど……」

 夕食を終えた薫とヴェロニカはレストランの入るホテルの一室に居た。

 そこは夕餉の場に劣らず大した装飾の成される部屋にあって、所謂、ロイヤルスイートと呼ばれる分類にあった。三十畳を越えるリビングダイニングに加えて二つの寝室と応接室、会議室、更には書斎が設けられた豪勢な間取りにある。規模としては三百平米近い。二つある寝室のうち一室は全面がガラス張りとして、広く高層階より地上を見下ろせる円形の展望室とも機能していた。

 眼下に広がる夜の都市部が放つ瞬きは、まるで夜空に浮かぶ星々を天上より眺める神々が如く立つ者の心を酔わせる。地上五十三階から眺めては、地上を歩く人や車の流れも眼球を漂う塵に等しい。並び立つビルの群れも多くは頭を下に置いて、視線を揃える建造物は片手に数える程度しかない。

「でも、こんな凄い部屋って……」

「気に入って頂けたら嬉しいのですが、高いところは嫌いですか?」

「い、いや、自分には勿体無いくらいだよ」

「いいえ、薫様は素敵な方ですわ。そのように謙遜なさる必要はありません」

 部屋に一歩踏み入ってより、薫は部屋の豪華絢爛な造りと、窓より覗く外の景色に言葉数も少なく見惚れていた。凡人には一生に一度だけ拝むことが叶うか如何か、といった場所なのだから、それも当然だろう。彼の父親が飲まず食わず数ヶ月を必至に働いて、やっと一泊が叶う程の部屋である。

「この場に立っても薫様の魅力は決して薄れることありませんもの」

「それは、なんというか、そこまで持ち上げられても僕は……」

「ふふ、困った顔をしている薫様も素敵ですわ」

「き、君、それはちょっと……」

 二人は広く外を見渡せる寝室にあって巨大なベッドを背に置き、眼下の光景を眺めるよう窓際へ並び立っていた。同室には他に人の姿も無い。先刻まで少女の傍らにあった厳ついスーツの男達も戸前で別れた。

「私のことはヴェロニカと呼んで下さいませんか?」

「名前で、呼んでしまってもいいの?」

「メールでは幾度と無く私の名を呼んで下さったではないですか。それこそ今更ですわ。私は薫様を薫様と呼ぶのですから、薫様も私のことをヴェロニカと呼んで下さらなければ不公平です」

「う、うん」

「それに名前で呼ばれたほうが嬉しいですわ」

「名前で……」

「はい、名前です」

 少女の願いに答える調子は学校で勉学に励む姿に程遠い。場の空気に呑まれた薫は非常に緊張していた。今に居る高級ホテルに宿泊することが初めてならば、女性に一晩を誘われたのも始めての経験だった。本人にすれば盆と正月が一緒にやって来たのより尚のこと大した事態である。

「ヴェ、ヴェロニカさん」

「嫌ですわ、薫様。さんは余計です」

「いや、しかし、君は僕の事を様付けなんだけど」

「女性は男性に付き従うものでしょう? それに私は、見てくれに限れば薫様よりも年下でしょう? ですから敬称を付けるのは当然です。けれど、薫様に限ってはその限りにありません。ですから、是非とも呼び捨てにお願いしますわ」

「けど、それはちょっと……」

「さぁ、ヴェロニカと呼んで下さいまし」

 一歩だけ薫に踏み込んだヴェロニカが、彼を正面から見据えて、顎下より瞳を覗き込むよう語りかけてくる。深い蒼色の瞳が彼の漆黒を突き刺さんと捉える。縦に伸びた鋭い瞳孔が薫の背筋を小さく震わせた。

「じゃ、じゃあ……、その…………」

「はい」

「ヴェ、ヴェロニカ……」

「はい、薫様」

 少女は彼の言葉に答えて、小さく可愛らしい笑みを浮かべた。

 僅かに上を向く真っ赤な唇の端と、凛と攣り上がった形の良い眦の多少だけ下がった表情は、彼の心臓を一層のこと高鳴らせた。ドクンドクンと自らの身体が揺れて思える程の緊張と興奮を与えた。

「薫様、今晩はご一緒して下さいますか?」

 薫の右手を静か両手に取って、粛々と少女が問う。

 歳幼い子供独特の暖かな体温が肉体の末端から広がってじんわりと全身へ伝わる。同じ肌にあっても、少女のそれは彼の無骨な表皮に比べて柔らかに艶麗且つ瑞々しくも艶やかだった。

「本当に、僕なんかで、いいのかな?」

「ええ、薫様だから良いのですわ」

「でも、僕は本当に、悲しいくらいに普通の人間だよ?」

「同じ人間に普通も何もありませんわ」

「いや、だけど……」

「やはり、私がこのように幼いから、薫様は難しいと仰いますの?」

「い、いや、君は十分に魅力的だよ。それは間違い無い」

「でしたら、その言葉に違わず私を求めて欲しいですわ」

「…………」

 また一歩、ヴェロニカが薫へと近寄る。

 ともすれば、互いの肩と肩が触れ合う程に肉体は接する。

 ヴェロニカは胸元に握った薫の手を開放した。そして、一連の流れを崩す事無く空いた両腕を彼の背に回した。背丈に大きな隔たりを持って、自然と彼女の顔は彼の腹部に納まる。まるで枕に顔を埋めるが如く、ヴェロニカは薫のシャツに頬を押し付けた。

「薫様、私と致して下さいませんか?」

 そこまで求められては、薫とて雄の本能を封じ込める事は叶わなかった。

「う、うん……」

「ふふ、ありがとうございます。嬉しいですわ」

ヴェロニカが返す笑みは歳に似合わず、酷く女の色香を感じさせる蠱惑的なものであった。

「さぁ、薫様、此方へいらっしゃって下さい」

「うん……」

 少女に導かれて薫は背後に佇む大きなベッドへと足を向けた。

 贅沢にも寝室の中央に設けられた寝台は、彼ら二人が寝転んだとしても、それ以上に余剰領域の残る代物だ。贅沢にも部屋の中央に設けられた楕円形であって、縁に腰掛ければ周囲を囲うガラス窓より夜景を眺められるようになっている。

 そこに少女は腰を落として薫の手を引いた。

 少女の正面に立つ彼は体勢を多少だけ崩して、片手を座る彼女の傍らに突く。目と鼻の先には妖しく笑う少女の顔があった。床に片膝を突いて、丁度、ベッドの縁に座る少女の膝元へ身体を預ける形となる。小さな膝小僧が彼の胸元に触れる。

「失礼ですが、薫様は過去に女性経験がありますか?」

「いや、……無いよ」

「ということは、もしかせずとも、私が始めてお相手となりますのね」

「う、うん」

「ふふ、嬉しいですわ。薫様の始めてを頂けるのですわね」

 自らの袂に置かれた薫の頭をヴェロニカはギュッと両手に掻き抱いた。

「あの、ちょっと、君……」

「君、ではありませんわ。ちゃんとヴェロニカと呼んでくださりませんか?」

「ヴェ、ヴェロニカ、これはちょっと……」

「これから、もっと凄いことをしようとしているのですわよ? 頭を抱かれた程度で動揺していては駄目ですわ。それとも、我慢が出来なくなってしまいましたのかしら?」

「いや、その、それは色々とあって……」

 頭部より全身に至る暖かな少女の体温は、幼少の名残に母親が抱擁とは如何様であったかと、忘れて久しい感慨を彼に与える。加えて、記憶には無い鼻腔へ届く甘い香りを多分に受けて、薫の思考は瞬く間に混乱を極めた。

 歳幼い少女に抱き締められている事実は、彼にとって非日常に違いなかった。

「薫様、私が薫様を快楽の極みにお連れ致しますわ」

「ヴェロニカ……」

 優しく、穏やかに、しかし、極めて妖艶な誘い。

 耳に息が届く距離に呟きを受けて、薫は全身に鳥肌が立つのを感じた。

「さぁ、此方にいらして下さい」

 下履きを落とした少女が薫の手を引く。それに誘いに従い彼もまた寝台の脇に靴を脱いで舞台へ上がる。皺も少なくピンと張られた敷布に二人分の凹みが刻まれた。己が身を横たえて、少女は自らの腹上へ相手を招くように握る手首を手繰り寄せる。薫は抗う事無く彼女の振る舞いに身を任せる事とした。

「今日は私が薫様を犯させて頂きますわ」

「お、犯すって、その言い方は……」

「ふふ、言葉通りの意味でしてよ?」

「え?」

「たっぷりと、薫様の雄を味わらせて頂きますわ」

 少女の両腕が薫の首筋に纏わり付いて来る。

 それは幼い少女が込める力にしては凄まじく、彼の身体を彼女の上へ強引にも引きつけた。互いの肋骨が擦れ合う感触があった。然して熱くない肌着を通して相手の体温を感じる。柔らかな肌の感触を感じる。

「ヴェ、ヴェロニカ?」

「薫様、とても可愛らしいですわ」

「可愛らしいって、そんな……」

「本当、食べてしまいたいくらい」

「っ!?」

 不意にヴェロニカの唇が香るの唇に重ねられた。

 ぷっくりと柔らかな感触が唇に伝わる。過去に経験の無い感覚を受けて、薫は全身を激しく硬直させた。どっと背筋から汗が噴出す。背筋から足先に至るまで筋という筋がピンと延びる。

「んっ……」

「んぅ……」

 女性経験に劣る薫は家族を除く異性との口付けさえ今日が初めての経験であった。

「んっ、ちゅぅ…………」

「んぅっ!?」

「んっ、んぅ、ん……」

「んっ! んんっ!」

 口付けを始めて間も無く、ヴェロニカは相手の唇を割って舌を差し入れた。

 それに驚いた薫の四肢がビクンと大きく波打って震える。咥内に入り込んだ異物はどろりとして暖かく、彼は驚愕に歯を立てるところであった。危うい所で顎の動きを止めて口を開き固定する。

 すると、少女は強張った彼の背と後頭部を強く抱き締めて来た。

 薫は自らの体重で相手を潰しては拙いと、ただ、両腕を突いて自らの体重が相手に掛からぬよう配慮するに必至だった。少女が彼を掻き抱く腕力は年柄に分不相応な力がある。彼は身を落とさぬよう抗うに必至だった。加えて、背に回された少女の片腕は彼の右腕を外より締めている。片腕に自重を支えるは聊かの苦労を必要とした。

「んぅっ……ふぅ……」

「んぅ……ちゅ…………」

 二人の口付けは時計の秒針が幾周を回るだけ続けられた。

 舌先に乗せて唾液が注がれる。何処か甘い香りに鼻腔を擽られて、薫は然したる抵抗も無くゴクリと喉を鳴らした。ゴクリ、ゴクリ、為されるが儘に彼は少女の与える快楽を受け入れた。それは夕食に出た酒に酔った為か、彼女の吐息に酔った為か、本人にも理解が叶わなかった。

「っ……ちゅ……ちゅぅ……」

「んっ……ぅん…………」

 それから、一頻りを過ごした後に少女は薫より口を離した。

 頭部の遠ざかるに従い、二人の唇の合間に透明な唾液の端が架かり、やがて、ぷつりと落ちる。途中に切れた唾液の一糸は下に置かれた少女の顔にぴちゃりと落ちて、その端正な顔を汚した。けれど、本人はそれを気にした風も無く、手でくいと拭い、濡れた指先を口に含む。

「んっ……。薫様、もしかして私を気遣ってくださっているのかしら?」

「……え?」

「必死になって身体を支えていたでしょう?」

「え、あ、ああ……、まあ、うん」

「本当、薫様は優しい心の御方なのですわね。無理な体勢にあって、身体がふるふると震えてましたわよ? それはそれは健気な姿にあって、私、不謹慎ながら興奮してしまいました」

 語るヴェロニカは妖しく口の端を上げて笑みを浮かべる。

「別に押し潰して下さって良かったのに」

「いや、それは無理だよ。君も、その、小さいんだし……」

「ふふ、今の程度でしたら、薫様が気に留める必要はありませんわ。私、こう見えても結構頑丈に出来ていましてよ? 薫様を一人支えることくらい何ら不都合ありませんわ」

「ふ、不都合無いって言われても、けど、仮にそうだとしても僕の心が痛いよ」

 少女の身体は贔屓目にも頑丈とは言い難い。すらり伸びた四肢は甚く華奢であって、下手に力を加えては折れてしまいそう。薄い胸板は多少の重みにも潰れてしまいそう。餅が如く肌の白は病弱にさえ捉えられる。その繊細にして脆弱な体躯は、それこそ、肉薄い陶磁か茎細い華を思わせた。

「こうして実際に顔を会わせるまでは、私も多分に緊張していましたわ。ですが、いざ出会ってみたのなら、やはり、薫様は文通にあった殿方に違わぬ紳士にあられて、私、今日と言う日に感謝致しますわ」

「き、君、流石にそこまで言われても……」

「ですから、今日は私が薫様を沢山、気持ち良くして差し上げますわ」

 不意にヴェロニカが薫の両肩に手を置いた。

 かと思うと、彼女は彼と自らの上下を位置変えるように、ベッドの上で横へごろり転がった。今まで下にあった少女が、今まで上にあった薫を押し倒す形となる。そして、尻を彼の臀部へと据えて背を起こし、ニコリと微笑を作る。

「夜は始まったばかりですわ。たっぷりと楽しみましょう?」

「…………は、はい」

「うふふ、素敵なお返事ですわ」

 そうして笑う少女の笑みは、薫に彼女と彼との間に横たわる歳の差を忘れさせた。いや寧ろ、酷く手練である年上女性の相手をしている風に錯覚させた。表情の端々からは有り余る艶が滲む。角度を変えて眺める幼い少女は、しかし、何処か大人びて彼の目に映ったのだった。

「薫様の此処は、もう準備万端のようですわね」

「ぅあっ!」

「あら、声を上げてしまって、可愛らしいですわ」

「だ、だって、ヴェロニカが急に触るから」

「触っただけでこのように反応していては、この後で私のオマンコに挿れてしまっては、薫様はどうなってしまうのですか?」

「オ、オマっ!?」

「オマンコ、ですわ」

「っ…………」

「ふふ、恥ずかしいのですわね?」

 薫の股間を擦っていた少女の手が、カチャカチャと音を立ててジーンズに巻かれたベルトを外し始める。その行為は手馴れたもので、視線は薫に終始向けられていながらも、片手で難無く止め金具を空けてしまう。もう一方の手は彼の頬をやんわりと撫でていた。

 ベルトを外し終えた少女は下着も纏めてズボンを下ろし、薫の下半身を露出させる。既に痛いほど勃起していた彼の一物は、生地の押さえを失うと共に、少女の腹を刺すように天上を目掛けそそり立った。

「まあ、薫様は素敵なモノをお持ちなのですわね」

「ちょ、ちょっと、そんな、いきなり」

「男と女の営みにいきなりも何もありませんわ。それに言ったでしょう? 今日は私が薫様を犯すのですと。こうして薫様を下に組み敷いて、内に溜める精の限りを私は頂くのですわ」

「精の限りって、そんな……」

「もしかして、嫌、でしたか?」

「いや、別に、そういう……訳じゃないけど」

「では、逆に薫様が私を犯しますか?」

「そ、それは駄目っ!  なんか、色々と駄目っ!!」

「では、今日は私が薫様を犯させて頂きますわね?」

「…………う、うん」

 もう観念したとばかりに蚊の鳴くような声で呟いて、薫は小さく頷いたのだった

 そんな彼の姿を視界に納めて少女は満足気に笑う。

「薫様、素敵ですわ……」

「っ!?」

「こんなに大きくて、私のオマンコ、壊れてしまうかも」

 不意に伸びて来た小さな手に竿を握られて、薫の背筋がビクンと震えた。ふにふにと柔らかな手の平の感触が、いきり立つ局部を包むように覆い来る。思いのほか力強い握力を受けて、彼は弓形に背を張らせていた。少女が五指に込める力へ緩急つけるに応じて、口からは自然と呻きが漏れる。

「オチンチン、凄く硬くなっていますわ。これは私で興奮して下さったのだと考えても良いのかしら? 私、このような形ですから、もしかしたら、薫様が反応して下さらないかもと心配しておりましたの」

「こ、これは、……だって、君が……」

「それとも、やはり私の身体には女としての魅力を感じませんか? 所詮は触覚に限る生理現象であって、平坦な私の胸では五感を持ってして薫様の興奮を促すことは出来ていないのですか?」

「い、いや、君が、可愛いから……、その、こうなるのは仕方無いじゃないか」

 場の雰囲気に飲まれてだろう。薫は素直に胸の内を明かしてしまう。実を語れば彼の性器はこの部屋に一歩を踏み込んだ頃合より身を硬くし始めていた。少女に手を引かれた時分で、既に痛いほどに膨れ上がっていた。

「まあ、それでは、これは私を見て興奮して下さっているのですわね?」

「う、うん……」

「ああ、とても嬉しいですわ、薫様」

 少女が薫に覆い被さるように抱きついてくる。そうして、繰り返し顔の至る所に口付けを繰り返した。ちゅ、ちゅ、ちゅ、と水気を感じさせる音が他に音の無い静かな部屋に幾度と無く響く。

 そして、その間も彼女の右手は薫の股間を撫で擦っていた。

 平素からの自慰に比較すれば非常に緩慢な扱きにある。しかし、性器を弄っているのは年齢が二桁に及んで間もない少女である。その精神面より与えられる背徳的な快楽は、彼に日頃より尚のこと高い快感を与えていた。加えて、顔面に寸毫の隙も無く唇を触れられては、それだけで果ててしまいそうだった。

「薫様、まずはお口で失礼しますわね」

「え?」

 満足行くまで口付けを繰り返したヴェロニカが、顔を離して彼に語る。

 けれど、女性経験の無い薫には一瞬の事、彼女が何を言っているのか理解出来なかった。初体験の連続に混乱しつつある思考でもって、相手が今度は何をしようとしているのか考える。

 ともすれば、薫が結論を出すのと少女が彼の肉棒を口に含むのとは同時であった。

「んっ……」

 少女は多少だけ身を後ろにずらして、薫の下半身に顔を埋めた。両手は彼の腰をがっちりと掴んで、股座に頬肉を触れさせている。ばさり散った黄金色の長髪が薄暗い室内照明を反射して、シーツの上にキラキラと瞬いて見える。

「ひゃっ!?」

「んふ、ひゃはひはひぃおほへへふは」

「ちょ、ちょっと、喋ると、そんなっ」

「んっ……ちゅぅ…………」

「んっ……」

 過去に感じたことの無い生暖く滑った感触に自然と声が漏れる。与えられる快楽は極上にあって、彼は自らの無様を抑える事が出来なかった。小さな女の子に鳴かされる自身を鑑みる余裕は一寸も無かった。

「ちょ、ちょっと、そんな、激しくしたら」

「んちゅぅ……ふぶっ…………はふっ……」

「の、喉に当たってるんじゃないっ?」

「ぅちゅう……んっ…………んぅっ…………」

 当初は竿を舐め亀頭を口に含む程度であった。しかし、次第に少女の頭部は上下に動きを見せ始める。性器全てを咥内に納めんと、深く喉の奥まで薫の肉棒をしゃぶり込む。陰毛が顔を覆うほどに深く。

「あの、その、苦しくないの?」

「んぅっ……ちゅぶぅ…………ぶふっ……」

「ヴェ、ヴェロニカ……、んっ…………」

「んっ……ちゅぅ…………」

 薫からの問い掛けにも答えず、少女は一心不乱になって口戯を続けた。ズビュズビュと音を立てて亀頭を吸う。舌と頬肉で雁首を擦る。尿道へ無理矢理に唾液を注ぎ込む。全ては自慰と比べ物にならない快楽を薫に与えた。

「んぅっ……ちゅぶぅ…………ぶふっ……」

「っぅ……んっ…………」

「ふぅ……んちゅぅ…………んんっ……」

「んん……ちゅ…………」

 激しい舌使いに益々のこと息子を膨張させる。

 まるで腰から下を湯に浸けているようだと、薫は快楽の縁で自らの股間に顔を埋める少女を眺める。そこに蠢く幼い舌は、彼の反応が一際目立つ雁首を執拗に攻めていた。喉の奥深くまで竿を飲み込み、そして、舌を縦横無尽に巡らせ四方八方より亀頭の敏感な凸部分を刺激してくる。

「んっ、ふぅっ……」

「あっ、ぅ……」

「ちゅぅ…………んっ……んんぅっ」

「す、凄い……こ、腰が…………」

 腰を引こうにも身体は両手にがっちりと抱えられており、どういう訳か押しても引いても身動ぎ一つ取ることは叶わなかった。それこそ万力に挟まれている風を思わせる力加減だった。少なくとも小学生を思わせる少女の為せる業ではない。そして、舌は執拗に彼の敏感な部分を舐め回してくる。ざらざらとした表面の微細な凹凸が擦れる感覚は、彼に多大なる快感を与えた。

 だから、彼が我慢の限界に至るには然して時間を要しなかった。

「んっ、ヴェ、ヴェロニカ、もう、僕……」

 身体をブルブルと震わせて薫は自らの限界を示す。

 少女が一物を口に含んでから数分と経ってない。初めての口淫は自慰の非でない興奮を齎し、平素とは比べ物にならない記録を生んだ。けれど、そのまま少女の咥内が白濁に汚れることは無かった。

 不意に、少女による攻めの手が止んだのだ。

「んっ……ぷはぁ…………」

「ぁ……」

 長らく咥えられてあった性器が急遽のこと外気に触れて、潤け蕩ける寸前にあった下半身は、ビクビクと力強く脈打ちながらも、せり上がった熱い滾りの放出を寸前のところで踏み止まらせる。何故ならば尿道の根元を少女の指が強く締め付けているからだ。

「駄目ですわ、薫様」

「ヴェロニカ……」

「ふふ、イきたくてイきたくて堪らない、といった顔をしてますわね」

「そ、それは、その……」

「でも、お口の中では駄目ですわ。初めてはちゃんと膣の中に出して欲しいのですもの。お口やお尻や目鼻の穴はその後ですわ。まずは、ちゃんと子宮を初発の新鮮な精子でタプタプに満たして下さいね?」

「ぅ、ぅん……」

 下半身に迫る茹だるような快感と有体な単語の羅列に薫の羞恥心は限界を向かえていた。最早、満足に少女の顔を見つめることも叶わない。頬を朱に染めて肩を萎縮させる姿は、どちらが男でどちらが女なのか、分からなくなりそうな程であった。

「それでは、薫様のオチンチンを私のオマンコに挿入しますわね」

「っ……」

 シーツに膝を突いて薫の上に跨った少女が勢い良く腰を落とした。

「んっ……」

「んあぁっ!」

 二つ上がった声は、しかし、薫の声に一方が掻き消される。

 成人男性の平均的な大きさより多少だけ大きな薫の一物。それを少女は一息に全て自らの膣内へ飲み込んでいた。下腹部には内に秘めた肉棒の形を浮き上がらせて、肌に縦長の影を落としている。未成熟の幼い膣は薫の肉棒で隙間無く一杯に膨れていた。

「ふふ、薫様、とても素敵な声でお鳴きになるのね」

「ヴェ、ヴェロニカ、これ、凄い……」

 下半身に電流の走るが如き快感を受けて、堪らず薫は声を上げていた。

 一方で少女は余裕の笑みを浮かべて薫の顔を見下ろしている。

「まだ挿れたばかりですわよ? これからもっともっと気持ち良くなるのですから、この程度で満足していては駄目ですわ。それに、私は薫様をずっとずっと犯し続けるのですから」

「んぅっ!」

 多少だけヴェロニカが腰を捻った。

 応じて、膣肉に亀頭を擦られた薫が声を上げる。

「何も考えられないくらい気持ち良くして差し上げますわ、薫様」

「ぁあっ!」

「共に快楽の極みに参りましょう?」

「ヴェ、ヴェロニカ……」

「薫様、本当、素敵ですわ……」

 それから少女は本格的に腰を動かし始めた。

 身の丈小さく四肢の細いこと極まるも、胸こそ平坦にあるが確かに腰は括れて、尻肉の柔らかなこと接する陰部に吸い付くが如く。他者の視線を意識した腰の運びは激しく、上下左右に際限無く振られる身体は触覚的にも視覚的にも薫を甚く刺激した。くいくいと見せ付けるように振るわれる臀部の軌跡は否応無く彼の股間を奮い立たせる。

「んっ、薫様のオチンチン、大きくて気持ち良いですわぁ」

「ぅあ……」

「それに雁首の返しも私のオマンコの気持ちの良い部分に引っ掛かって、凄く相性が良く思います。これはきっと、私と薫様の相性を示しているのですわね。私、感動ですわ」

「ヴェロニカ、な、なんか凄いよ、これ……」

「ええ、私も凄く心地良いですわ」

 薫は熱に魘されるが風に息も絶え絶え語る。

 少女は蠱惑的な笑みを浮かべて相槌を打つ。

「薫様、私のオマンコの締まり具合は如何ですか?」

「し、締まり具合って、そんな……」

「もっとキツキツの方がお好みかしら?」

「ひぅっ!?」

 キュッと膣肉が竿の全体を締め上げた。

 堪らず薫は声を上げる。

「ヴェ、ヴェロニカ、こんな、腰が、腰が痺れる」」

「では、このまま扱いて差し上げますわ」

「っ!?」

 酷く悶える薫とは異なり、ヴェロニカの表情には多分に余裕が伺える。朱に上気した頬こそ興奮を見て取れる。しかし、主立って善がるのは薫にあり、少女は今し方の言葉に違い無く一向に攻める側だった。

「んぁっ、あぁっ!」

「ふふ、段々と良い声を上げるようになって来ましたわね」

「だ、だって!」

「良いのですよ? もっと激しく悶えてしまっても」

「んくぅ……」

「此処には薫様と私しか居ないのですから、そして、部屋には完全な防音が成されているのですから、どれだけ大きな声で喘いでも良いのです。ですから、その素敵なお声を私に聞かせて下さいな」

「ああっ、あっ!」

 興奮と快楽に平常の箍を外されて、段々と薫の口からも明らかな悦楽の音が上がり始める。それを良しと見て少女の腰使いもまた激しさを増す。

 結合部からはぐっちゅぐっちゅと大きく水音が立つ。まるで蛇口の壊れた水道が如く愛液を滴らせて、少女の膣口は薫の性器を送り迎え繰り返す。縦にスジが一本通っただけの可愛らしくも幼い性器が、しかし、大きく口を開いて根太い摩羅を飲み込む様は酷く扇情的である。痛々しくも興奮を誘う。

「こ、こんなに広がって……」

「ええ、薫様のモノを咥え込む為ならば、私のオマンコは幾らでも口を広げますわ。ですが、それでも膣の締まりには自信がありますの。もっと、もっと、キツク締め上げてあげますわね」

「えっ? あっ! んあぁっ!!」

「どうですか? 薫様のオチンチンの先端が私の子宮口に触れていますわ」

「す、すごいよ、これ……」

 答える薫の口端からは、だらしなく唾液が垂れている。

 ふっと胸を重ねて顔を近づけた少女は、それを舌先にペロリと舐め取った。

「ふふ、美味しいですわ」

「う、うぁああっ!」

 急に相手の顔が近づいた事に驚いて薫の興奮は鰻登りだ。少女の膣中にあって、性器は痛い程に身を硬くして根元より小刻みに揺れる。その感覚を体内に感じて、少女の顔は笑みに綻んだ。

「まあ、薫様ったら、私の中でびくんびくんと震えていますわ」

「だ、だって、君がいきなり……」

「私で興奮して下さっているのですわね? とても嬉しいですわ」

 そうして、再三に渡り顔面には口付けの嵐が舞う。

 少女の唾液に濡れて薫の顔はどろどろだった。目元や口元、鼻の穴までも少女は唇と舌を触れてくる。最早、自らの舌先が触れていない場所は一寸も無いと言わんばかりに粘液を接せさせる。

 彼女の唾液は媚薬が如く薫の劣情を誘った。

「こんな、ヴェロニカ、凄く気持ちいい……」

「んっ、はぁ、私も気持ち良いですわ、薫様」

「僕、初めてなのに、んっ……いいのかな……」

「良いですよ、もっと、もっと気持ち良くなって下さいな」

 薫からの問に答えるようヴェロニカは腰の動きを激しくする。

 再び背を起こしては、腰下まで伸びる長髪を振り乱して身体を揺する。

 艶やかな金髪の端々がサラサラと肌を流れて、彼方此方こそばゆい感触がある。けれど、それが気にならない程に薫は快楽の極みにあった。少女の身体が上下に一往復する毎に下腹部へ熱いものが蓄積していく。

「ヴェロニカのなか、凄く熱くて、きつくて気持ちいい、気持ちいいよっ!」

「あっ、ん、薫様のも、太くて長くて、私、オマンコの奥の奥まで穿られていますわ。ごりごりって、凄く気持ち良いのです。これでは、本当、癖になってしまいそうですわ」

「ぼ、僕も……」

「ふふ、いいですわ、いいですわ。癖になって下さいな」

「んっ、ああっ」

「薫様を私の虜にしてみせますわ……」

 陰茎の出し入れに合わせて小陰唇が外へ開き、内へ引き込まれを繰り返す。両股を大きく開いて馬乗りになった少女だから、薫は多少だけ頭を上げれば、その生々しい肉の動きを鮮明に眺めることが出来る。

 尿道から皮の剥かれた陰核に至るまで、全てを晒さんと腿の付け根は筋張って、内股に恥骨筋や長内転筋、薄筋が作る影を眺められる。そうした人間の生き物らしい部分は、無意識にも雄の本能を擽った。先刻はほっそりとして感じられた両脚であっても、目前に開かれた内股は妙に肉々しく力強いものとして薫の目に写った。

 そして、事実、少女の身体能力は彼のそれを圧倒した。

「薫様、ほら、薫様のオチンチンがこんなに激しく、私のオマンコに出たり入ったりしていますわ。もう裂けてしまいそうな程に激しいですの。どうですか? 私と薫様の恥ずかしい場所が見えますか?」

「ちょ、ちょっと、ヴェロニカっ!?」

「身体は痛くありません?」

「いや、痛いって程じゃ無いけど、それより、君、凄い力……」

「恥ずかしいのですけれど、私、少しだけ力持ちなのですわ」

「いや、力持ちとか、そういう次元の話じゃないような……」

 少女の両腕が薫の背に回されたかと思うと、強引にもその肉体を引き起こしたのだ。下腹部を支点に腰が曲がり、引かれるが儘に彼の肉体は起き上がる。ある程度だけ背が上がると、少女は相手を抱き留めるように背と首筋へ左右の手を回した。頭部を掻き抱く形となる。薫は顎を引いて互いの結合部を視界一杯に納める事となった。

「ほら、こんなにぐちゅぐちゅと厭らしい音を立てていますわ」

「こ、こんなに濡れてる……」

「恥ずかしながら、私、少しお汁の多い体質ですの」

「それに、凄く甘い匂いがする……」

「まあ、薫様ったら、匂いなんて嗅いでしまって」

「ご、ごめんっ!」

「ふふ、いいのですわよ? 謝らなくても。寧ろ存分に嗅いで下さいな」

「ぅあ……」

 少女の腰が上下するに合わせて、彼女の尻と薫の下腹部とはパンパンと音を立ててぶつかり合う。その都度、大量の愛液が飛沫となって彼の顔に飛び掛った。立ち込める甘い香りと相まって、まるで酒に酔った気分となる。事実、食事の折よりアルコールは回っているが、それにも増して彼の脳を麻薬が如く痺れさせた。

 無理な体勢に背筋が痛むことさえ忘れて、彼は食い入るように結合部を見つめていた。

「さぁ、もっと激しくいきますわよ」

「んぁぁっ!!」

 少女は薫の頭部を両手に抱いて腰使いを激しくする。額に少女の柔らかな腹肉を感じながら、彼は文字通り自らの犯される様を鮮明に五感で感じていた。少女の局部を目の前に置いて、少女の体臭を肺一杯に含んで、少女の体液を舌先に味わい、少女の体温を接する肌に感じて、少女の嬌声を鼓膜に響かせる。

 身体の全てが少女に包まれているような錯覚があった。

「んっ、はぁっ、いいですわ、ああ、薫様」

「う、うんっ、ああ、すごい、気持ちいい」

「薫様のオチンチン、もっと、もっと深くまで、子宮まで」

「ぁあ、んっ、ぅ…………」

「私のような小さな女の子のオマンコで、薫様、薫様は気持ち良くなっているのですわよ? 親に甘える子供のように抱きしめられて、けれど、はち切れんばかりに股間を勃起させているのですわよ?」

「ぅ、そ、そんなこと、うぅ、だって……」

「だから、私のロリマンコをたっぷりと味わって、薫様。この小さな子宮の全てを白濁に染め上げて、お腹が膨らんでしまうほどに精子をびゅうびゅうと吐き出して下さいまし」

「ああっ、あ、あ……」

「太くて長いオチンチンから、沢山、精子を注いで良いのですわよっ!」

「そ、そんなこと言われたら……、僕…………」

「あぁ、また、びくんびくんと震えていますわ」

 少女の身体が激しく震える。ガクガクと壊れてしまいそうな程に震える。ぎゅっと両腕に薫の頭部を抱きしめて、けれど、腰から下は内燃機関のピストン運動を思わせるが如く高速で動いている。上半身と下半身との挙動の違いに違和感を禁じえない程に動いている。

 恥も外見も無く蟹股に大きく開かれた両足の先は力強くシーツに皺を作り、少女は腹を捩じらせて膣口より肉棒を出入りさせる。男性器ピストン、女性器はシリンダー、愛液は潤滑油となって只管に快楽を生み出し続ける。性欲という燃料は永遠に尽きる事無く思えた。

「あっ、んっ……、薫様、如何ですか? 私のオマンコの味は」

「凄く、凄く気持ちいいよ、ヴェロニカの、オマンコ」

「ああ、嬉しいですわ。嬉しいから、私、もっと動いてしまいます」

「んあぁっ、そ、そんなに動いたら……」

 頬に当たる二の腕の柔らかな感触と与えられる熱が至極、心地良い。薫は自らの持ち得る全ての感覚を持って少女の与える快楽を貪った。女性との性交は斯くも心地良いものなのかと脳裏に刻んだ。

「ふふ、私も、気持ち良いですわぁ」

「駄目、駄目だよヴェロニカ、これ以上、これ以上は駄目だよっ!」

「駄目? 駄目なのは薫様ですわ。今日は私が薫様を犯すのだと言ったでしょう? まだまだ、この程度で私は満足致しませんわ。もっと、もっと激しく交わらなくては高みに至れないのですから」

「そ、そんなっ!?」

「もっと激しくオチンチンをオマンコに出し入れしてしまいますわ」

「あっ、ああっ!!」

 少女の尻が薫の下腹部を打つ音が一層のこと激しくなる。パン、パン、パン、まるで性器の周りを叩かれている様だと彼は感じる。しかし、その些細な痛みすら、今は快楽として認識していた。

「はぁん、薫様、もっと深くまで、もっと、子宮を突き破るくらい」

「あっ、ああっ、あ、あぁ、あ……」

「薫様、薫様っ、薫様っ!」

「あ、だ、駄目、これもう、駄目……」

 互いに汗塗れとなり身体を絡ませている。ヌルヌルと滑る肌と肌の接する心地良さが一層のこと性器を立たせる。肉体のあらゆる部位が粘膜となって交じり合っている感覚。強制される快楽に薫の精神は混乱を極めた。

「あぁ、薫様、いいですわ、そう、子宮へねじ込むように、ああっ!」

「は、激し……、ヴェロニカ、僕…………」

「んっ、薫様、オチンチンがオマンコの中で膨れて来ましたわ」

「だ、だって、もう、僕、僕…………」

 肉体の全てを少女に奪われ、薫は快楽に泣き崩れるが風に言葉を漏らす。決壊は近かった。それは一頻り前に咥内で弄られていた為でもあるが、しかし、それ以上に少女の膣は具合が良かった。強烈な締め付けは元より、膣内にびっしりと触手でも生えているが如く彼女の性器は彼の性器を刺激する。前戯が有っても無くても碌に我慢出来ず絶えていた事は今の彼の喘ぐ姿より明白だろう。

「薫様、イクのですわねっ!? イってしまうのですわねっ!?」

「あ、う、イク、もう、イクよぉっ!」

「ええ、注いで下さいっ! たっぷりと、私の子宮に熱い精子を注いで下さいましっ! 妊娠するほどにっ! 子宮を破裂させるほどにっ! お腹を突き破ってしまうほどにっ!」

「あ、ああっ! あああっ!」

 ぐちゅぐちゅと激しく上下する少女の身体。その腰に両手を伸ばした薫は、自ら腰を上に突き上げて少女の一番深いところを抉った。同時に、溜めに溜めた欲望の限りを全力で吐き出した。

 ドクドクと音が聞こえてきそうな射精だった。

「あぁっ! 出ていますわ。熱い精子が私の子宮を犯してますわっ!!」

「ヴェ、ヴェロニカっ!」

「いいですわ、薫様、とても素敵ですわっ!」

 頭部を相手に抱えられた体勢のまま、薫は少女の背に腕を回してひしと抱きつく。ブルブルと震えて止まない下半身を押し付けるように、強く強く、一切の遠慮を忘れて抱きついた。彼の内には頭の真っ白になるような快感だけがあった。

「あぁ……、すごく暖かくて、とても心地良い感覚ですわ…………」

「う、あぁ…………」

 久しぶりの射精は長らく続いた。

 びゅくびゅくと竿を膣内に震わせて、薫は大量の精液を放つ。少女の膣は彼の内に残る全ての白濁を吸いださんと、ぎゅうぎゅう激しく伸縮して、今に尿道を過ぎようとする精液を自ら求める。

「あ、ああ、凄い…………」

 それから秒針の幾らか回る間を薫は少女の胸に顔を埋めて、射精の余韻に浸っていた。その心地良さと充実感と言ったら自慰の比では無い。過去の射精の全てが嘘に思える程の心地良さが残った。

 頬に感じる少女の胸の感触は天にも昇る想いだった。

「ふふ、たっぷりと出しましたわね、薫様」

 多少を置いてヴェロニカが語りかける。

「う、うん……」

 そこで自らの醜態に気づいた薫は慌てて彼女の背に回した両腕を離した。

 しかし、彼の身体が少女より離れる事は無い。

 彼の背と首筋には依然として少女の腕が回されている。

「射精の瞬間の薫様、本当、凄く可愛らしかったですわぁ」

「っ……」

 妖艶な笑みを浮かべて語る少女の姿を鼻先に置いて、薫は羞恥より頬を朱に染める。僅かに首を傾げれば唇と唇が接してしまいそうな距離にあって眺める少女の顔立ちは、とても、とても、可愛らしく、そして、厭らしい。

「ガクガクと身体を震わせて、本当、食べてしまいたいくらい」

「そ、それは、その……」

「お腹の中は薫様の精子で一杯ですわ」

「ご、ごめんっ! 中で出しちゃったっ!!」

「別に謝る必要はありませんわ。寧ろ、膣内に出してくれなかった方が酷いですもの。私はオマンコに薫様の精子を感じることが出来て、とても幸せな気分に浸れていますわ」

「ヴェ、ヴェロニカ……いいの?」

「当然ですわ」

 語る少女の調子は軽い。

「ですが、私はまた達していませんの」

「え?」

 薫の見つめる前で少女の口端が妖しく釣り上がった。

 相手の背を片腕に支えて、空けた一方の手で少女は薫の頬をやんわりと撫でる。女性経験の無い彼は疑問を顔に浮かべる他に無い。そんな彼の反応を楽しむように、少女は嬉々として言葉を続けた。

「ですから、薫様は挿入したまま抜かずに二回戦ですわ」

「に、二回戦……?」

「もっと、もっと、沢山の精子を子宮に注いで貰いたいですもの」

 不意に少女がギュッと自らの膣を萎縮させる。

 達したばかりの敏感な一物は堪らず悲鳴を上げた。

「んぁあっ!」

「ふふ、薫様、今晩は寝かせませんわよ?」

「あ、ちょ、ヴェロニカ……」

「膣や子宮は元より、尻穴も、お口も、鼻穴も、顔も、髪も、胸も、手も、足も、全身に一毫の隙も無く薫様の精子を注いで、刷り込んで、馴染ませて、頭から足先までを白濁に染めて貰いますの」

「…………」

 そうして笑う少女の瞳は薫を捕らえ、決して離そうとはしなかった。