喰らえ、メテオストライク!

デリヘル 一

 お酒を飲み始めて、凡そ二時間が経過した。

「だーかーらー、お姉ちゃんは駄目なんだってぇー」

「う、うるさいわねぇー! 私は完璧よぉー!」

 今、俺の目の前で繰り広げられているのは、絶世の金髪ロリ美少女の絡み合い。ソファーに腰を落ち着けたまま、けれど、両手両足を突き出しあっては、やいのやいの、言い合っている双子姉妹のなんと美しきことか。

 これ以上の肴はない。

「だったら今すぐに告白してくればいいじゃーん」

「なんでそうなるよのっ!?」

「だって、あのバーテン選んだのお姉ちゃんじゃん」

「あ、アンタだって一緒に選んだじゃないっ!」

「私が選んだのは、綺麗なお姉さんの方だもん」

「ぐっ……」

「あは、お酒もいいけど、そろそろ血も飲みたいよねぇ? ねぇ?」

「べ、別に、私はまだ……」

 可愛らしいけれど、割と物騒だな。

 更に言えば、かなり活動的に暴れているので、めくれ上がったドレスの裾から下、パンツが覗いていたりして、非常に喜ばしい。

 特に妹さんが履く黒のローレグは、あと少し頑張れば、クリトリスが見えるのではないかというほどギリギリのもの。頑張れ! 頑張れ!

「あー、変態にオマンコ見られてるよぉー」

 俺の視線に気付いた妹さんが絡み酒。

 それでもドレスの乱れを直さない辺り、一生ついて行きたい。

「お気軽に豚とお呼び下さい。お嬢様」

「あはははは、ぶたー! ぶたー! ブサイクなぶたー!」

 これはセックスチャンスか。チャンスなのか。

 しかも姉妹丼のチャンスか。

 さっきから股間は痛いほどに勃起している。かなり飲んでいる筈なのに、どうしても股間の膨れが収まらない。今までレフト寄りに納めていたちんポジは、けれど、限界近くにまで膨れて、必然的にセンターへ置かざるを得ない状況だ。

 亀頭がトランクスに擦れて痛い。

「おいー、オマエは私のあだ名を呼べー! ちゃんと呼べ―!」

「千年かわいいよ千年。愛してる」

「ほんとうかー?」

「本当だ。マジマジ超絶マジ。千年のこと凄く好きだ!」

「うほほー」

 酔い具合を鑑みるに、鬼っ子が一番で、時点に姉妹、最後が俺。

 伊達にワンチャン狙ってないぜ。

 客観的に眺めると、相当にクズい気がするけど、残すところ四日。こうなったらどこまでも堕ちてやろうじゃないか。俺はクズになる。ヤリチン系クズになる。

 なんて誓ったところで、速攻、痛いところを指摘される。

「あぁー! この豚、私たちのパンツ見て勃起しているよぉー!」

 妹さんが俺の股間を人差し指に指し示して吠えた。

「なっ……」

 その声に驚いた様子、姉の方もまた、俺の股ぐらへと視線を寄越す。

 これを遮るよう、鬼っ子の手が伸びては、膨らみをポンポンと叩いた。

「おー! おー! 膨らんでるなー!」

「お、おぉぅっ……」

 俺は危機をチャンスに変える男だ。

 これは来たな。ブサメンの時代来たな。

 バーテンダーさん二名の素面な視線が気になるけど。

「よし! 乱交セックスしよう!」

 提案するなら今しかない。

 俺は全力で起案した。

 が、

「絶対に嫌だよ?」

「有り得ないわね」

 姉妹から、速攻で否定された。

 コイツら、酔っ払ってるんじゃないのかよ。

 一瞬、素面を垣間見た。

 そんなまさか。

「みっじめだねぇー。どれだけ大きくなっても、絶対にオマンコへインできないのにねぇー? カップラーメンでオナニーとかしてるの? あ、ちょっと見てみたい、見てみたいかも知れない!」

「生物として至上の使命が、その種の繁栄だとしたら、貴方という存在は、生態系に真正面から喧嘩を売っているわね。群れを作らない野生の動物だって、ちゃんと番いを見つけて子を残すというのに」

「え、ちょ……」

 カップ麺でオナニーは俺も未知の領域だ。

 っていうか、何故にそんなこと知っているのか妹さん。

「ねーねー! オネーサン! カップラーメン買ってきて!」

「え? あの……」

「はーやーくー!」

「は、はいっ! 直ちにっ」

 オネーサン受注しちゃ駄目だよ。

 シャツやスラックスを取りに行った際と同様、彼女は駆け足にバーラウンジを後とした。本業のバーテンダーとして以上に、小間使いとして役が馴染んで思える美女だ。主人が残念なら従業員も残念という素敵仕様。

「あぁー、マジで行っちゃったよおい」

「あははははははははは!」

 笑い上戸だよ妹さん。

 この子と恋人になった男は、きっと凄く幸せだろうな。

 とても楽しくお酒を飲めることだろう。

「おいちょっとアンタら。俺はもう限界だ」

「な、なによっ、まさか、暴れるつもりっ!?」

 すっくと立ち上がる俺。

 もう股間を隠す必要もない。

 これにエリーザベト姉が一瞬、怯えた表情を見せる。妹と比較して、こちらは随分と肝っ玉が小さい。雪女に遭遇したときも速攻で拳銃を撃ってくれた。どれだけ強がって見せても、根っことのところでは小心者なのだろう。

「俺はデリヘルを呼ぶ!」

 仁王立ちで宣言だ。

 で、即座に発注だ。

「ちょっとそこのバーテンダーさん! デリヘル呼んで!」

「え?」

 我関せずとグラスを磨いていた強面のバーテンダーさん。

 唐突に呼ばれて、キョトンとした表情にコチラを見つめてくれる。その表情からは、これ以上、自分を巻き込まないでくれと、熱い意志が言外に伝わる。

 だがしかし、そんなの知ったことか。

 俺はもう我慢の限界だ。セックスがしたい。したすぎる。

「いいからほら、基盤店で制服系のとこ呼んでっ! ロリ系で!」

「え、あの、それは……」

「童貞のまま死ねるかよっ! こうなったらお前らの前でフィーバーだ!」

 ダンとソファーテーブルに右足を乗せて言ってやる。

「へぇー? 本当にそれでいいのぉー?」

「俺はヤルって言ったらヤル! 華麗に脱童貞して、アンタらを惚れさせてやるわ! 俺とデリヘル女のセックスショーを見て、股間がうずくのを抑えられなくなったアンタらは、あぁ、身も心も俺の女になる!」

「これだけお酒を飲んで、それでも私たちの前で、ちゃぁんと勃つのかなぁ?」

 挑むような表情で妹さんが言う。

 まさか負けるモノか。

「はっ! その情けない称号とも今日でおさらばだ。手始めに玄人童貞を捨て去り、そして、次は発情したアンタたちを利用して、素人童貞の称号すらも捨て去ってやる! 僅か一晩でヤリチンの称号を手に入れる!」

「へー、へー、それは頼もしいねぇー。でも、私たちは君に関して、その趣味趣向から生い立ち、性癖に至るまで、全てを知ってるんだよ? それこそ幼少の頃に、入院期間中の君が何をしていたのかまで」

「はっ! それがどうしたことか! むしろ猛るね!」

 妙に絡んでくる妹さんへ、俺は中指をおっ立てて宣戦布告だ。

 今のは少しばかり頭にきた。

「ちょ、ちょっとっ! 下品なことは止めて貰えないかしらっ!?」

「まーまー、いいじゃんお姉ちゃん。どーせ彼は何もできないよ」

 下ネタが嫌いなのか、荒ぶる姉。

 その両肩に手を置いて、妹さんは無理矢理に押さえつける。

 一連の振る舞いには十分な余裕が見て取れた。

「はぁ? ふざけんなよ。だったら呼ぶぞ、呼んじゃうぞっ!?」

 ズボンのポケットから端末を取り出し凄んで見せる。

 伊達にネットでお気に入りの風俗店をチェックし、そこに掲載された体験動画や遊び方指南の漫画でオナニーをしていない。口コミ情報も当然に調査して、もしも行くならどこが良いか、常に最新の優良店情報を見張っているのだ。

 この手の風俗サイトって、それだけで十分にエロいから、オナニーのおかずとしては、非常に優秀である。あぁ、今俺が居る場所から数キロ四方の地点で、この人がセックスしてるかもしれない、とか妄想すると、相当にエロいでしょ。

 実際に呼んだことは、まだないけど。でも、それも今日までだ。

「いいよ? それじゃあ呼んじゃおう!」

「言ったな? 後で後悔しても知らないからな? この七五三吸血鬼め」

「っていうことだから、ね? おねがぁーい」

 妹さんがダンディーへと告げる。

「よ、よろしいのですか?」

「超特急でお願いねー!」

「はぁ……」

「あ、それなら痴女宅急便のスズメちゃんお願いします!」

 妹さんから許可を得たところで、俺はいつの日かお願いしようと思っていた店舗と、そこの在籍嬢の名前を伝えた。この店はパネマジがないと評判の、尚且つ基盤ありの優良店だと、ネットに書いてあった。交渉次第では生ありとか。

「生最高! 生最高! 生が最高ぉっ!」

「うわ……流石にそれは気持悪いぃ……」

 ガチ引きで妹さんが言う。

 うるさいよ。

「……わかりました」

 頼まれて、ダンディー何処へとも電話を掛け始めた。

 妹さんにお願いされて以後、彼の手際は随分と手慣れて思える。恐らく、こうしたやり取りも、日常の出来事なのだろう。

 これだけ金の掛かったマンションで、お抱えのバーテンダーなどしているのだ。男女のあれやそれやも、注文された酒を出すのと大差ないものなんだろう。

 そして、そこに住まう相手はと言えば、意中の異性。エリーザベト姉。なんて考えると、少し萎えた。彼女も一人寂しい夜は、イケメンホストを電話で呼び出して、とか。

「…………」

 いやいや、それは良くない。関係ない。

 無駄なことを考えている暇があったら、エロを。更なるエロを。

 エロいトークで自身を滾らせなくては。

「なんだよ妹さん、随分とサービスが良いじゃないですか」

「私のおごりだよ?」

「え、マジで?」

「あ、でも、最後まで出来なかったら、その時は払って貰うね?」

「いやいやいや、そんなことないから。三発は余裕だし」

「へー? もしも本当だったら、私もシテあげていーよ?」

「え? マジですか!?」

「うん。生中出ししても良いよ? 孕んであげる」

「うぉおおおおおおおおおおおおおっ!」

 チンコが滾るぜ。

 この願いが叶ったのなら、隕石で死んでも悔いはない。

 立ち上がったまま咆吼を上げる。

 すると、すぐ隣の席に腰掛けた鬼っ子から、クイクイ、ズボンを引っ張られた。太股の辺りの生地を指先に摘まんでのこと。視線は両者の姿勢の都合から上目遣い。まったく、些末な仕草がいちいち可愛らしいロリっ子だ。愛してるよ、千年。

「そんなに交尾がしたいのか?」

 いきなり問われた。

「当然だろ? 男子たるもの、交尾して子を成す為に生きているのだ」

 鬼っ子の問い掛けにも即断だ。

「それなら私が名前のお礼に相手をしてやるぞ? 孕んでやるぞ?」

「なっ……」

 ここで更なるサプライズ。

 嬉しすぎて涙がちょちょぎれる。

 俺のモテ期は今だ。

 だがしかし、ここで彼女としてしまっては、ダンディーが発注したデリヘル嬢との試合に支障を来す。それは非常に良くないことだ。

 デリヘルファックの成果には、妹さんとのセックスが掛かっているのだ。ここは万全を期したい。三日分のオナ禁精子を無駄遣いする訳にはいかない。

「千年。俺はアンタのことを愛している」

「おほ、告白された」

「だがしかしな、今、それはできない、どうしてもできないんだ」

「私じゃ嫌なのか?」

 少しばかり残念そうな表情で問うてくる。

「い、いや、嫌では無い。むしろ最高に嬉しい。俺はアンタを孕ませたい。全力で孕ませたい。愛してるよ千年愛してる。しかしながら、今は倒すべき相手がいるんだ。どうしても今日、この場で打倒しなければならない、相手がいるんだよ」

「そうなのか?」

「そうなのだ」

「そうかぁー。それなら仕方が無いな」

 なんだろう。存外、聞き分けの良い鬼っ子だった。

 俺、彼女とここまで仲が良かっただろうか。

「ありがとう。君の気持ちはとても嬉しいよ。いや、もう、本当に愛してる」

「交尾したくなったら言えよ。すぐに私がしてやる」

「おぉおおおおおおおおおっ」

 過去、これほど嬉しい提案があっただろうか。

 今なら隕石で死んでも悔いはない。

 世界に微笑みながら逝ける。自信ある。

 童貞のまま死んでも良い。

「お姉ちゃん。やっぱりコイツ、ムカつくんだけど?」

「だから私に言わないで貰えるかしら?」

 問題のデリヘル嬢が到着したのは三十分後だった。