喰らえ、メテオストライク!

デリヘル 二

「お、お待たせしましたー。宅配痴女ですー……」

 玄関ホールに立つ宅配痴女在籍のスズメ嬢は、想定外の誤発注だった。

 同派遣元のサイトによれば、前職は美大生。年齢は二十歳。歳と前職の肩書きが合致しないのは、退学したからだとか、写メブログに書いてあった。万人を魅了する尽す系の美人とのうたい文句だった。

 だが、こうして見ると、美人というよりは普通の人。

 少し頬がやつれている。

 なんか全体的に疲れてる。

 やっぱり、普通より少し下かも。

 元気なピース姿のサイト写真が、他の嬢と比較して印象的だった。そこに魅力を感じて、今まで散々おかずに利用させて頂いていた。

 だけれども、こうして実際に顔を会わせてみると、まるで別人のよう。ぜんぜん元気じゃないし、明るい印象も抱けない。

 水商売に疲れた女の顔って、こういうのを言うのかと、素直に感じた。

 加えて、酷く腰が引けている。

 原因の一つは、金髪ロリ姉妹が提供する無駄に金の掛かったセックス会場。玄関ホールからここまで、通路は専用のものが用意されているし、エレベータもフロア直行となる。それくらいに彼女たちの住居は高級だった。

 ただ、それ以上に特筆すべきが、俺の背後。

「あ、は、はい、どうも……」

 彼女を迎えるべく玄関に立った俺の後ろには、ズラリ、酒の席を共にしていた他の面々が並んでいた。エリーザベト姉に加えて妹さん、千年、更には何故か、バーテンダーのダンディーまでもが連なっている。

 ちなみにカップ麺を探しに行ったオネーサンは、まだ帰ってきていない。

「貴方、こんなのが良いの?」

「へー、風俗嬢って初めてみたぁー。なんかフツーだね?」

「…………」

 スズメ嬢へ与えられるのは、品定めをするような金髪ロリ姉妹の視線。

 まるで動物園にパンダでも眺めるよう。

 俺だったら速攻で逃げる。

 が、彼女もまたプロだった。

「あの、宅配痴女の、スズメ、ですが……」

 スゲェ根性だな。

「あの、ど、どうぞ……」

 とりあえず、相手を宅内へ促すよう腕を動かす。

 対して、彼女は困惑の表情に問い掛けてきた。

「え? あ、いや、ここはエリーザベトさんのお宅で……」

「はい、それで合ってますから、あの、どうぞ奥に……」

「……はい」

 なんだこれ。

 本人の外見もそうだけれど、これはちょっと、サービスとして色々と違うよ。だって、宅配痴女のウェブサイトには、玄関先で即尺って書いてあったのに。即尺のオプションは、どのコース、どの嬢を選んでも無料だって、ちゃんと書いてあったのに。

 淫乱な痴女が、出会って三秒でパックンチョします、って、書いてあったのに。

 などとは、決して言えないほど、俺も緊張していた。

		◇		◆		◇

「へー、お子さんが居るんだぁー」

「え、あ、はぃ……」

 宅配痴女のスズメ嬢を招いた先、バーのラウンジでは何故か酒席。

 しかも、言葉を交わしてみれば、あれやこれや、聞きたくない事実が彼女の口から溢れ出してくるではないか。

 ウェブサイトには二十歳って書いてあったのに、実は二十七歳とか。前職は美大生って書いてあったのに、本当はアニメ系の専門学校とか。

 しかも、同校を卒業した後は、合コンで会った土方のマッチョ系イケメン彼氏とデキ婚して、親子三人で賃貸アパートに慎ましやかな暮らしだとか。

 ただ、今は旦那さんが職場で喧嘩をして、仕事を辞めてしまったそう。当然のこと家庭経済は火の車。何をするにもお金が足りない。

 仕方なくこうして彼女は風俗業に至るそうな。

 とは言え、彼女自身、風俗は専門学校生の頃から経験があり、それ以前、十代での売春を含めれば、既に十数年の大ベテラン。こういうの慣れてるんです、とかとか。

 赤裸々に語ってくれた。

 なんだよ。

 なんだよもうこれ。

 特にアニメオタクでありながら、アニメとは縁遠い土方系イケメンと結婚したのだという点が、自分としては悲しい。なんというか、胸の内を抉られる。年齢とか、風俗経験とか、そういうのはどうでも良い。ただ、その一点が、極めて辛い。

 事実、アニメを共通の話題にできないのが辛いんです、とかとか。妹さんと語らい合っているから、なんかもう、なんかもう、俺だってアニメとか見るけど、で、でも、土方、土方がっ、土方が俺の世界を侵食してくれる。土方系のイケメンが。

 趣味の一致なんて、顔面偏差値を前としては何の意味もないんだと理解した。

 見ず知らずのブサメンに中出しされてでも支えたい家庭が、それで決まるのだと。

「ところで、そこの彼が貴方とセックスしたいそうなんですけど」

「え? あ、えっと、あの……その……」

 呆気カランとした妹さんの言葉を受けて、一回り年上の筈のスズメ嬢は、けれど、上手く言葉を返せずに、どもるばかりだった。

 流石に有体が過ぎる物言いだ。

「ハイジ……、貴方も随分な性格をしているわね」

「私はお姉ちゃんの為を思ってやってるんだよぉー?」

「はぁ? 何の話よ」

 今に一同が居するのはバーラウンジのボックス席。

 俺と鬼っ子の配置は、これまでと変わらない。

 ただ、エリーザベト姉妹の間には、ちょこん、宅配痴女のスズメ嬢が、所在なさげに腰掛けている。相当に緊張しているらしく、尻の位置は非常に浅くて、背筋は青竹でも通したようにピンと伸びていた。

「えっと、あの、これはその……」

 続く言葉に困り、あたふたするスズメ嬢。

 これを捨て置いて、妹さんはカウンターの側へ視線をやった。

「ねーねー! コースは何分で予約したのー?」

 ダンディーに尋ねる。

「はい。一晩です」

「あ、そう。なら今晩はずっとセックスしていられるねぇー」

 今度はダンディーから俺に視線を移して、満面の笑みで言ってくれる妹さん。

 宅配痴女宅急便は、決してお高い風俗屋ではない。一時間で五万、六万と搾取するような高級ソープとは違う。それなりのお値段で、そこそこサービスをしてくれる、ちょっと優良なデリヘル。それがネットでの評判だった。

 だからそう、こういう高級住宅に呼ぶ感じの風俗じゃなかったのだ。

 とは言え、店と相手を指定したのは俺自身だ。こんなことなら、ダンディーおすすめの店を紹介して貰えば良かったと思わないでもない。きっと、この部屋に見合ったスゲェ良い女の人が来たんだろうな。なんて、未練がましく思う。

「あのっ……」

 ひたすらに困惑するスズメ嬢。

 彼女も人間。風俗嬢だって人間。

 それも周囲環境の影響を受けやすい、女という生き物だ。

 ここは俺が主導するしかない。

「アンタら、ちょっと二時間くらい外に出ててくれない?」

 姉妹に向けて堂々と言い放つ。

 俺、格好いい。

「えぇー、ここは私とお姉ちゃんの家だよぉ?」

「そうよ。何を勝手なこと言っているの?」

「え?」

 姉妹の言葉を受けて、スズメ嬢が声を上げた。

 彼女は依然として自らの置かれた状況を理解しない。

 これに構わず、妹さんが言葉を続ける。

「あ、それとだけど、君が出てくのも駄目だよ? 約束したよねぇ? 私たちの前で三回中出しするって。もしも出来なかったら、あ、そうだ、罰ゲームとか、決めてなかったよね? どうしよう?」

「っ……」

「私の言うこと、なんでも一つ聞いて貰おうかなぁー。ね?」

 ヤバい。背筋が凍った。

 ぜんぜんセックスって雰囲気じゃないだろ、おい。

 俺のチンポ、完全にポークビッツモードだよ。仮性包茎で悪かったな。消しゴムのケースにだって、書いてあるだろ。使い終わったら、ちゃんとケースにしまって保管して下さいって。チンコだって、皮にしまって保管した方が長持ちするんだよ。

 うぉあああああ。

 せめて、アルトバイエルン程度には自己主張して欲しかった。

「寝室は幾らでも余ってるから、好きなところ使って良いよ? 私たちも一緒に移動するから。部屋だけは無駄に多いんだよねー。このマンションって。ちゃーんと最後まで、中出しするところまで、受精するところまで、見ててあげる」

 ニコっと、天使のような微笑みを浮かべる妹さん。

 本当にラブい。

 むしろ彼女の笑顔で勃起しそう。

 心の底から愛している。

「…………」

 対して、宅配痴女のスズメさんの、なんと普通なことか。

 いや、外見に関しては、普通以下か。

 ネットの情報なんて信用ならないね。これがパネマジだ。髪の毛の長さすら、写真とは数十センチのスケールで違っているのだから。

 俺が知るスズメ嬢は金髪ショートだ。だと言うに、今こうして眺める相手は茶色のロングだ。風俗嬢の定番スタイルだ。

 金髪ロリ姉妹と並び腰掛けては、正直、裸体を晒されたとしても、オマンコをクパァされたとしても、興奮できないと思う。勃たないと思う。

 素直に言えば、エリーザベト姉のパンチラ、否、太股チラにすら劣る。っていうか、普通に眺めるエリーザベト姉の方が遙かに興奮する。凄いグッとくる。

 エリーザベト姉、最高に愛してる。

 こんなことなら、スズメ嬢を並ばせるんじゃなかった。アンタら姉妹ってば、可愛すぎるんだよ。やり難いったらない。両者の差が如実に表れて辛い。

 ああ、可愛すぎるよエリーザベト姉妹。

「え、えっと……」

 だから、そうした背景も手伝って、なんと答えたものか、押し黙る俺。

 対して、大人の女としての意地か、必至に言葉を続けるスズメ嬢。

「あのね? えっと、それじゃあ、私と彼は部屋に移るから……」

 チラリ俺を見つめて、テメェ明らかに未成年だろ、疑いながらも語る。

 そこには愛など皆無。なんというか、凄い義務感。

 宅配された先が、普通のお宅ではないと、彼女も理解しているのだろう。ならば、せめて給料分は働いて、自分の食い扶持を稼がんとする姿勢だった。

 そりゃそうだ。彼女はお金を貰って男に抱かれるのが勤め。

「…………」

 だが、そうは言われても、こっちが困る。

 意中の相手とスズメ嬢を並び眺める。

 同じソファーに並び腰掛けているにも関わらず、金髪ロリ姉妹にばかり視線が向かい、問題の嬢は後ろに置かれた観葉植物ほどの魅力も感じない。

「あ、あの……」

 もしも昨日までの俺だったら、或いは勃起することができたろうか。

 分からない。

 ただ、今はポークビッツだ。極めてポークビッツだ。冷凍保存。

「あれ? どーしたの?」

 無邪気な笑顔と共に、妹さんが問うてくる。

「あ、あー、そうだなぁ。そう言えば、俺、コンドーム買ってなくて……」

 コンドームとか、購入はおろか、実物を見たことすらない。

 けれど、そうした必至の反論も虚しく、畳み掛けるように続けられる言葉。

「アフターピルなら用意するから大丈夫だよ? 幾らでも子宮にドクドクしちゃっていいよ? 万が一妊娠しちゃっても、その時は系列の病院で堕ろさせてあげるから」

「あ、あのっ……」

「ちゃーんとVIP用の個室を用意するよ? あ、もちろんロハでいいよ。たとえ他人の男の子供だったとしても、きっちり最後まで面倒をみてあげる」

 その言葉だけを耳とすれば、至れり尽くせりの待遇。

「だから、ほら、ねぇ?」

「え? あの、そ、それは……」

 続けられた妹さんの言葉にスズメ嬢が慌てる。

「生中出しっていう約束で来たんだよね? それとも違うの?」

 有無を言わせない問い掛けだった。

 ぱっと見、八歳くらいの幼女なのに。

「……えっと、あ、その……」

 他方、スズメ嬢はと言えば、文句の一つも返せない。年下の子供に挑発されて、しかし、しどろもどろするばかり。酷く落ち着きがない。

 この場の雰囲気が、彼女から大人としての自信を完全に奪っていた。

 そうした二人のやり取りを眺めていると、世の中、金が全てだということを思い知らされる。金さえあれば、幼女でも大人を手玉に取れる。

 自信は、プライドは、金で買える。

 スズメ嬢は完全に圧倒されていた。金持ちのフィールドに。

 それは妹さんが、よい大人であるダンディーを顎で扱っている点も、非常に大きく働いているように思える。ダンディーは厳つい大男なのだ。

 もしもエリーザベト姉妹に逆らったら、黒スーツの男たちがやってきて、袋叩きに遭うのではないか。そんな妄想が働いてもおかしくない環境である。

 ダンディーのやつ、少しはフロア最年長の貫禄を示せよな。グラス磨いてる場合じゃ無いだろ。キュッキュしてんじゃないですよ。

 日本人、特に女性にとって、西洋白人男性は自信と余裕と権力の象徴なのだから。

「ちょっとハイジ、いい加減にしなさいよ」

 見かねた姉が、スズメ嬢に助け船を出す。

「なに?」

「何って貴方、流石にこれは、その、あの……」

「これから彼が絶倫セックス見せてくれるんだよ? 楽しみだね!」

「だ、だからっ!」

 嬉々として語る妹さんに、姉は負けている。

 っていうか、彼女たちは本当にお酒を飲んでいるのだろうか。

 先刻までのイチャ付き合いは完全に形(なり)を潜めて思える。爛々とした瞳にこちらを見つめる様子は、獲物を前にした肉食獣のそれだ。酷く冷静で、虎視眈々と隙を窺っているように思える。特に妹さん。

 姉の方はともかく、彼女の腹黒さを思うと、有り得ない話じゃない。

「妹さん、ちょっといい?」

「なにー?」

「とりあえず、俺がヤル前に一杯いこうか」

「え?」

 手にした空のグラスを掲げて言う。

「飲めない?」

「別に飲めない訳じゃないよー?」

 彼女の肩が、ビクリ、ほんの僅かに震えた。

 それを俺のエロ眼は見逃さなかった。

「ならいいよね?」

「え、えっと、でも、ほら、私、ワインの方が好きだから」

「まあまあ、たまにはウィスキーとかいいじゃん? 飲んでみると、意外とおいしいよ? それともまさか、一杯も飲めない程に弱かったりしないよね? 妹さんくらい魅力的な女性なら、お酒も余裕だよね?」

 確信めいたモノを感じて尋ねた。

「あれー? 押しが強いんだね? 意外かなぁー?」

「せっかくだし同じお酒で乾杯しようよ」

 有無を言わさず、俺はカウンターの側へ向けて声も大きく追加注文。

「すみませーん、さっきのボトルで下さーい!」

 ちなみに、隣に腰掛けた千年は、いつの間にか意識が危うい。

「おー、おー、まわるー、なんかー、もうー、まわるー」

 明日は重度の二日酔いで確定だ。

 だから、この場は俺と妹さんのタイマン勝負。

 絶対に負けない。絶対に勝って、妹さんと子作りセックスするんだ。

 俺は、金髪ロリが、大好きなんだ。

 その外見だけで、付随する何もかもが心底から愛せるくらいに。

 妹さんと愛し合って、結婚して、子供作って、とか、想像するだけで、幸せで、幸せで、もう他に何も要らないし、何も必要ない。

 ああ、自分もだいぶ酔っているな。千年のことを言えたもんじゃない。

 思考があっちへとんだり、こっちへとんだり、どうにもおぼつかない。色々と考えるところが移ろっては、どうにも意識が一つに定まらない。

 だが、酒を飲むことだけは出来る。

 いける。

「お待たせ致しました」

 美人バーテンダーのお姉さんは、カップ麺を買いに行ったまま帰ってこない。

 代わりにダンディーが、お酒を持ってきてくれた。国内リセラーの直販でも十数万するアイラモルトのボトルだ。ナイスダンディー。良い仕事をする。

 これを受けては、一瞬、妹さんの瞳が細まり、その先に彼の姿を捉えた。

 応じて短い悲鳴が、ヒィ、ほんの僅かばかり上がる。可愛そうに、何も悪さなどしていないにも関わらず、ダンディーは逃げるよう、カウンターの側へと去って行った。

 男としてそれはどうなのよ。疑問に思わないでもない。或いは既に十分な調教が為されているのか。なんて羨ましいんだ。俺も妹さんにオチンチンを踏まれたい。

「さて、それじゃあ乾杯しよう?」

「え、えっとぉー、女の子に無理矢理お酒を勧めるのはー、良くないと思うよ?」

「いいからほら、これ持って」

 空のグラスを差し出す。

「それとも、ブドウジュースしか飲めないお子さんなの? ロリロリ?」

「っ……」

 ピクリ、妹さんの眉が撥ねた。

 どんぴしゃじゃないですか。

 彼女のお高いプライドを直撃であります。

「チクっちゃうよ? 千年にチクっちゃうよ?」

「ちょ、ちょっと、貴方、それはっ!」

 エリーザベト姉が脇から声を上げる。

 既に彼女の中では明確な力関係が出来上がっている様子だ。昨日に喰らった腹パンが、相当に効いているのだろう。吸血鬼の癖に痛いのが苦手なのかも知れない。

 先輩吸血鬼曰く、削って削られてが不死者として、吸血鬼の一般的な喧嘩スタイル、痛みは慣れろ、とのこと。であれば、彼女は未だ半人前に違いない。

 そんな臆病な性格も激烈に可愛いよ。

 愛してるエリーザベト姉。

 あぁ、お酒を飲むと愛が溢れてくれるから不思議だ。

「じゃあ飲もう? ほら、今の千年、かなりヤバい具合だし」

「まわるぞー、すげー、ぐるぐるでー、あーあーあー」

 俺んちじゃないし、ここなら幾らでも吐いて良いぞ。沢山飲め千年。

「はい、これ持って」

「ぐっ……」

 渋々と言った様子で空グラスを手に取る妹さん。

 そこへトクトクトク、ダブルを超えて、その更に二倍くらい注いでやる。

「ちょ、ちょっと、多いよっ!?」

「まぁまぁ」

 この時点で既に勝敗は決したも同然。姉の方があれだけ酒に弱いのだ。一卵性の双子である以上、彼女もまた相当に弱い筈である。

 ここは一気に攻めるべし。

 俺は自分のグラスにも同じだけお酒を注ぐ。流石に自分だけ少ないというのは不公平だし、彼女たちエリーザベト姉妹とは、どんなときでも対等でありたい。

 ということで、準備完了。

「それじゃあ、かんぱーい」

「か、かんぱーい」

 少しばかり口元を引き攣らせて、それでも可愛らしい妹さん。

 宅配痴女サービスのスズメ嬢が、登場から速攻で空気になってるけど、気にしない気にしない。酷く居心地悪そうにしているけれど、気にしない気にしない。精々、今日この日の出来事をソーシャルネットなんちゃらに報告すれば良い。

 ということで、一気。

「じゃあ、一気ね」

「え? ちょ、ちょっとっ!」

「んぐっ、んぐっ、んぐっ」

「んっ、んっ、んっ……」

 二人してグラスへ口を付ける。

 喉の粘膜にアルコールが流れる。焼けるような痛みが伝わる。覚悟していなければ、吐いてしまっていただろう。ズキズキと痛むほどに喉を刺激される。

 それでも俺は注がれたお酒を一息に飲み干した。

「ぷはぁっ!」

 ダンっとグラスをソファーテーブルへ打ち付けるように置く。

 すると、対面に腰掛けた妹さんもまた、同時にグラスを置いた。

「ふっ、ふぅ……」

 ちゃんと一気していた。

「お、おぉ、ちゃんと飲めるじゃないですか」

「これくらい、楽勝だよー」

「その割には眉間にしわが寄ってるよ? 可愛い顔が台無しだ」

「これは君の顔が気持悪いから、自然とそうなってしまうんだよ?」

「うぐっ……」

 流石は妹さんだ。

 この打たれ強さもまた、愛おしい。心の底から愛してる。

「さぁ、私は飲んだよ? 次は君の番だよね?」

 流石にすぐに酒が回るようなことはなかった。

 せめて、あと三十分くらい場を持たせることができれば。

「分かった、分かったよ妹さん。それじゃあ、とりあえずシャワーでも行こうかな。今日は暑かったから、なんつーか、汗をたくさん掻いちゃったし、流石にそのままって訳にもいかないだろう」

「スズメちゃん、シャワーは無しでもいいよね?」

 即座、俺からスズメ嬢へと向き直る妹さん。

「え、あ、はい。即尺が無料オプションですし、シャワー無しも大丈夫です」

「だって、よかったね? オスの匂いをスズメちゃんにこすりつけて、自分の色に染められるチャンスだよ! これで立派に童貞卒業できるねっ! 相手は玄人だけど!」

「くっ……」

 強い。流石は妹さんだ。

 アルコールの血中濃度は、経口摂取の場合、一時間後に最高値に達する。流石にこれは望めない。しかし、摂取後三十分でも七割には達する。彼女が姉と同様、お酒に弱いと仮定した場合、後者であっても十分な影響を与えられるだろう。

 よって、俺と彼女の戦いにおいて勝敗を決するのは、三十分というウィンドウ幅を如何に攻略するかに尽きる。こちとら、とてもじゃないがスズメ嬢の裸体では勃起できない。なんとしても妹さんの意識を酒に沈める。

「はーい、それじゃあ場所を移動しまーす! こっちでーす!」

 これを相手も理解しているのか。

 妹さんは自ら先導するよう席を立ち、歩み始める。

 それまでと比較して、かなり強引な手だ。

「あ、ちょ、ちょっと待ったっ!」

「まさか女の子に無理矢理お酒を飲ませておいて、自分だけ逃げたりしないよね? 私、そういう男って、一番に嫌いだから。そんなことされたら、君のこと今以上に嫌いになっちゃうかもしれないよぉー。もう二度と、話しかけてあげない」

「ま、まさか、にに、逃げるわけ、ないじゃんっ!?」

 やめて、これ以上は嫌われたくない。

 妹さんとの会話は、俺にとって癒やしだ。

 妹さんとお話しする為なら、存在が消失したっていい。

「それじゃあ、ほら、こっちだよー? ほら、みんな行くよー」

 場は妹さんの為すがままだった。

 その背に連なるよう、俺たちは場所をバーラウンジから移動する。

 隣接するリビングを抜けて、廊下を進み、幾らばかりか歩く。

		◇		◆		◇

 辿り着いた先は、同フロアに設けられた寝室の一つだ。

 バーラウンジやリビングがそうであったように、寝室もまた非常に値の張りそうな作りをしている。ベッドはクイーンサイズが二つ並んで、それでも他に家具を置くスペースが十分に取れるほど広い。

 点在する調度品は、椅子一つ取っても、一財産となりそうな気迫を感じさせる。本当にこんな上等な部屋で、俺みたいな駄目野郎がセックスしても良いのかと、真顔で尋ねたくなるほど、ブルジョアジーな寝室だった。

「それじゃあ、どうぞ。始めちゃっていいよー?」

 そんな一室で、俺はベッドの傍らまで追いやられる。

 先んじてシーツに身を横たえるスズメ嬢は、既に服を脱いで全裸である。ちなみに二人ともシャワーは浴びていない。

 そして、何故かベッドの周りには、これを取り囲むよう、妹さんの他、エリーザベト姉、千年、更にはダンディーの姿までもがある。

 ダンディー邪魔すぎる。

「いやいや、流石に男と女の愛し合う姿を他人に見られるというのは……」

「別にいいと思うよぉ? お金に買われた仮初めの愛でしょ?」

 妹さんの言葉が、段々と辛辣さを増して思える。

 酔いがまわりつつあって、彼女も焦っているのだろうか。それともこれは、あぁ、あれか、既にお酒がまわっており、今まで被っていた猫が剥がれて、本来のサディスティックな素顔が、見え隠れし始めているのかも知れない。

 となると、これは本格的に妹さんとセックスしたい。妹さんから逆レイプ風味の強制射精セックスしたい。妹さん、本当に可愛すぎる。金髪ロリツインテール最高。妹さんに見つめられるだけで千回は射精できる。

「いやいや、そんな身も蓋もない……」

 ロリロリロリロリ。

 ロリかわいいろり。

「いーから、ほら、さっさとセックスしようよっ! セックスっ! あー、私、君がその子とセックスしているところ見たいなー? 生中出ししているところ、近くでじぃーーーって見たいなぁ!」

「っ……」

 妹さんの放つエロ語を受けて、息子がリザレクション。

 ビクリ震えて、僅かばかり戦意を取り戻した。

 が、

「え、えっとぉ……」

「あの、お客さん、私の方は、いつ来てもいいよ?」

 戸惑う俺にスズメ嬢が語り掛ける。

 ベッドの上へ意識を戻して、そこに寝そべる彼女を視界に収める。スズメ嬢だ。すると、どうしたことだろう、途端に萎んでゆくからやるせない。どれだけ興奮しようと思っても、彼女では息子が反応してくれないのだ。

 むしろ、逆に鎮静効果がある。教科書の隅に彼女の裸体を掲載しておけば、授業中、原因不明の勃起に焦り、チンポジの修正に悩むことも無くなるのではないかと思う。黒ずんで汚い陰部とか、二五歳を越えて未だ小さい胸とか、なんか、むなしい。

「あっれー? どうしたの? ねぇ、どうしちゃったの?」

 ここぞとばかりに妹さんが畳み掛ける。

 ニコーっと、満面の笑みだ。

「ちょ、ちょっとハイジっ! あんた、酔ってるんじゃないのっ!?」

「別に酔ってないよ-? ただ、少し楽しくなってきただけだもん」

 姉からの静止も無視して、執拗にこちらへ軽口を向けてくれる。

「ねーねー、ズボン脱がないの? 相手は準備万端だよー?」

「いやいやいや……」

「いやいやいや、なに?」

「いや、その、それは……」

「君が自分で脱げないのなら、私が脱がしてあげる」

「え?」

 妹さんの手が、俺のズボンに伸びた。

 想定外の出来事を受けて、更にそれが好きな女の子であったことも手伝って、俺は全く反応ができなかった。されるがまま。

 彼女は数秒と掛からずベルトの爪を外して、ホックを外して、スラックスを下着ごと、膝下までズリ下ろした。

 都合、彼女の顔の正面に俺の逸物が顔を見せる。

「あっはー、なにこれー! ちーさーいー!」

 笑われた。スゲェ笑われた。

 ただ、どれだけ笑っても、それ以上のスキンシップへは至らない。せめて、少しくらいツンツンして欲しいじゃんかよ、願っても、決して叶わない肌接触。

 だがしかし、それでもいと嬉し。

「さーさー、それじゃあ見せてよ。絶倫生中出し三連発ぅー!」

 妹さんに背中を押された。

 吸血鬼の怪力は大したものだ。

 俺の身体は容易に吹っ飛ばされて、ベッドへと向かう。縁に足を引っかけて、シーツの上へダイブ。その先で待つスズメ嬢は、手を伸ばせば届く位置にある。

 顔を上げれば、彼女の裸体が目に入った。

 彼女は彼女で相応にプロである。商魂逞しく、それっぽいポーズを取って、俺に向けて腕など伸ばしてみせる。いわゆるセクシーポーズ。グラビア的な。

 恐らく、相当の額を約束されているのだろう。普通の客が相手だったら、コール先に他人がいた時点で、早々に帰っている筈だ。

「いいよ。おいで? 気持ち良くなろう?」

 誘われた。

 生中出しの舞台へ誘われた。

 これは恐らく一生に一度のチャンス。観衆には大好きなエリーザベト姉妹まで揃っている。俺のしょぼい人生では、二度とない機会だろう。壮大なセックスチャンスだ。ワンチャンどころか、サードチャンスまで保証された最高の舞台。

「…………」

「どうしたの?」

 だが、これは無理だ。

 どれだけ心を奮い立たせても、スズメ嬢の身体を隅から隅まで舐めるように見て、過去に閲覧してきた極上のエロ画像たちを思い起こして、至高のシチュを幾十幾百と脳内展開して。けれど、俺は、俺は。

「……あの、大丈夫?」

 スズメ嬢に気遣われる。

 そこで何もかもが尽きた。俺の戦いはここまでだった。

 中途半端に処理された陰毛がヤバい、普通以下の顔面偏差値もヤバい、当然、相手は同じ人間だ。完璧なんてきっと無理だ。粗を探せば気に入らないところなんて幾らでも出てくる。

 けれど、それらを無視しても、どうしても無理なところがあった。

 顔の造形よりも、胸の大きさよりも、むだ毛の処理よりも、他の何よりも、黒色の髪がアウトだった。アジア人に特徴的な黄色い肌が無理だった。こちらを伺うように蠢く、髪と同じ色の瞳が無理だった。

 無理だった。

「妹さん」

「なーにー?」

「……俺の負けで、いいです」

 今まで競っていた相手に向き直り、素直に頭を下げる。

 その場に腰を曲げて謝罪のお辞儀だ。シーツの上に座り混んでいる都合、それはすなわち土下座となる。けれど、どれだけ無様を晒そうとも、これ以上は無理だった。

 どう考えても無理だ。これまで幾度となく、オカズにしてきた相手なのに、どうしても、こうして現物を前にしてしまうと、無理なのだ。

 興奮より嫌悪感が先に立った。

「えー? なにそれ、もう終わりなの? まだ先っちょも入ってないよ?」

「俺、初めては好きな人としたいんです」

 どれだけ酒に酔っていても、それだけは、やっぱり気になってしまう。例え四日後にメテオ喰らって死んでしまうとしても。

 こうして何ら関心のない異性の裸を前にして、今更ながら切に感じてしまった、酷く下らない貞操感がヤバい。おかげで童貞のまま一生涯を終えるんだ。

 けど、スズメ嬢とシて死ぬより、エリーザベト姉妹に告白、玉砕して死にたい。

「……なにそれ、つまらないよ?」

 妹さんがゴミ虫でも眺めるよう、俺を眺めて言う。

 語る口調は酷く冷たくて、そっけなくて、それでも俺には心地良い。

「いやもう、ほんとう、マジでエリーザベト姉妹のこと愛してる」

「うわ、キモちわるっ……」

「ちょ、ちょっと、流石にこの流れでそれはないんじゃない?」

 それを口にした途端、意中の相手から白い目で見られた。妹さんのみならず、姉の方からも、まるでゴミ捨て場にゴキブリでも見つけたような眼差しに見つめられる。

 ただ、俺はと言えば、蔑まれる視線すらも、相手が好きな人だと、猛烈な快感に変わる。背筋がゾクゾクとする。最高に心地良い。気持ち良い。満たされる。

 相手が俺という存在を認識しているだけで、幸せだ。

 俺は金髪ロリが好きなのだ。大好きなのだ。

 俺のチンコは金髪ロリとセックスする為に存在している。用法用量を守って正しくご使用下さい。用法用法に示されない黒髪日本人とのセックスは受け付けません。

 ノーセックス!

「大好きです。大好きです。僕は二人のことが大好きです」

 シーツへ額をこすりつけるようにして土下座。

 エリーザベト姉妹に謝罪する。

 冷静に考えてアルコールの影響が、かなり強い。

 きっと、明日は自己嫌悪。

 でもハイジちゃん可愛い。コージマちゃん可愛い。金髪ロリ可愛い。

 あーやばい。マジやばい。来た。さっきの一杯が。来た。

 感情が抑えられない。

 どうやら、あの一杯は墓穴だったようだ。

 こっちが先に限界へ達してしまった。お酒怖い。

 ハイジちゃん可愛い。

「ちょっとこれ、なに? 凄く気持悪いよー! お姉ちゃんっ!」

「そ、そんなこと私に言われても困るわよっ!」

 頭を下げ続ける俺の旋毛が向かう先、姉妹はあれやこれや。キモイキモイと連呼しては、土下座スタイルを維持する俺をどうしたものか、ああだこうだと言葉を交わす。

 ならば、そんな状況へ特攻してきたのが、バーテンダーのお姉さんだ。

 寝室のドアが唐突、開かれたかと思いきや、廊下から姿を現したのは麗しの美女。大きな胸と引き締まった腰回り、そして何よりも、金髪のシニヨンが魅力的。

「お、お待たせしました! 買ってまいりました、カップ麺!」

 ズバァンっと右手に某有名メーカーのそれを掲げてみせる。

 ここまで走ってきたのだろう。額にはビッシリと汗。おかげでテンションも相応に上がって思える。こういうキャラだったろうかとは、誰も彼もが疑問に思うところ。

 結果、場の誰も彼もの注目はお姉さんの下へ。

「え……」

 恐らくは騒動を聞きつけて、この寝室を特定したのだろう。

 一同に見つめられて、お姉さんはカップ麺を掲げた姿勢のまま静止。

「あー、そう言えば私が頼んだんだよねぇー」

 固まってしまった金髪美女を眺めて、ハイジちゃんが呟く。

「ちょ、ちょっとハイジ、あんたっ!」

「なんかもー面倒だしー、これで遊ぼう? ね? お姉ちゃん」

 アーデルハイト・エリーザベト・フォン・プファルツちゃん。

 その瞳が、怪しく輝いた。

		◇		◆		◇

「あはー! なにコイツ、こんなのが気持ちいいの!?」

 この世の出来事とは思えなかった。両手両足を縛り付けられて、俺は今、ベッドの上に仰向けで横たわっている。

 そして、すぐ隣には愛しい愛しい、ラブ炸裂なエリーザベト姉妹が、こちらを見下ろすよう座っている。ドレスの裾がめくれて、太股がちらちら。お姉さん座り。

 ベッドの上、その中央に寝かされた俺を二人が囲う形だ。

 部屋には他に誰の姿もない。

 他の面々は、妹さんが一命を下すと共に、リビングへ向かい去って行った。

 千年に関しては、この寝室が意識の終着駅。見事に酔いつぶれてしまい、バーテンのお姉さんが抱える形で回収していった。どうやら調子に乗って飲ませすぎたようだ。

 だから、この部屋には、俺と俺の好きな人しかいない。

 あぁ、世界がグルグルとまわる。まわる。

 エリーザベト姉妹かわい。

「カップ麺に性器を突っ込んで気持ち良いなんて、へんたーい!」

「ちょ、ちょっとハイジっ、そんなに激しくしたらっ!」

「だって、この男、すごく情けない顔をするんだものっ!」

 そして、何故か俺のチンコは、カップ麺に突っ込まれていた。

「や、やめっ……」

 湯こそ捨てられているものの、未だ熱湯の名残を伝えるノンフライ麺が、俺の敏感なところを責め立てる。本来でれば碌な刺激を与える筈がないカップ麺オナホ。しかし、それを手に扱く相手が妹さんとなれば、興奮も一入だ。

 脳血管が破裂しそうなほどにエロモードしていた。

 かわいい、妹さんかわいい。姉の方もマジかわいい。

 かわいすぎる。愛してる結婚したいフォーエバー。

「お姉ちゃん、ほらみて? これ動かすだけで、こいつの腰がびくびくするぅー!」

「ハイジ、貴方ってば酔ってるでしょっ!? 私と同じで強くないのに、無理して一気に飲んだりするからっ! これ以上は止めておきなさいっ!」

「私は酔ってないよ? それより、ほら、ほら、せっかくなんだから、遊ぼ?」

「だからそれが酔ってると言うのよっ!」

 よく見れば、妹さんの手には酒瓶が握られていた。

 いつの間に調達したのだろう。

 彼女はそれを口に運びながら、グビグビ。もう一方の手で、俺の息子を収めるカップ麺をピストンさせている。気持ちいいよ。気持ちいいよ、妹さん。

 姉の方が素面さながらの酔い方を見せるのに対して、彼女はスタンダードな酒乱の様子だった。それも下ネタに強いという、男にとっては夢のような属性持ち。

 妹さん愛してる。本当に愛しているよ。

「あ、あぁっ、妹さんっ! 妹さんッ! ハイジちゃん、愛してるっ!」

「これが気持ちいいのっ!? ほら、ほらほらっ! どうなのっ!?」

「良いですっ! 凄く良いですっ! ハイジちゃん、愛してますっ!」

「だからそれが気持悪いって言っているのっ! いい加減に自重しようよっ!」

「嫌だ! 絶対に嫌だっ! 俺はハイジちゃんとコージマちゃんが大好きだっ!」

「あーもーっ! このままいっちゃぇっ! 気持悪いよぉっ!」

「あっ、あぁああああああああああああっ!」

 イクッ、いってしまう。

 今はギリギリの堪えているけれど、それでも、これ以上は。

「ほらっ!イッちゃうの! カップ麺でいっちゃぇ!」

「ハイジちゃん、ハイジちゃん! 大好き、愛してる、大好きだよぉっ!」

「きもいよっ! きもいきもいきもいっ! きんっもいよぉっ!」

 キモイと叫ぶに併せて、上下に激しく振るわれるカップ麺の容器。

 チンコを挿入するために開けられた穴から、中に収められた麺やかやくがもれて、俺の腹の上に散らばる。熱い。けれど、そんなの些末なことだ。今、その容器を支えている相手を思えば、股間を刺激する熱湯の名残など誤差。人生の誤差。

「ハイジちゃんっ! ハイジちゃんっ! あぁ、ハイジちゃんの為に死にたいっ! コジマちゃんっ! コジマちゃんっ! コジマちゃんの為に死にたいッ! 二人のために死にたいっ! 愛してるよぉおおおおおっ!」

「ああああもうっ、気持悪いっ! だったら死んじゃえっ! カップ麺で無理矢理オナらさせられて死んじゃえっ! このまま情けない姿を晒してしんじゃえっ!」

「ちょ、ちょっと二人ともっ!」

 ああ、幸せだ。

 コジマちゃんに見られながら、ハイジちゃんにカップ麺でコキコキして貰えるなら、俺はこの先、どれだけ過酷な運命が待ち受けていようと、必ず乗り越えることができる。

 きもちいいい。

 きもちいいよ。

 肉体的にも精神的にも満たされる。

 金髪ロリ美少女最高。

 ハイジちゃん三唱元気良くっ! ハイジハイジハイジっ! ハイジィイイイ!

「あ、や、やばいっ! やばいですっ!」

 妹さんの手が、目で追えないほどに激しく動き始める。

「いいよっ! いっちゃいなよっ! ほらっ! ほらっ! ほらほらほらぁっ!」

「あぁ、いくっ! いっちゃうっ!」

 これ以上の我慢は無理だ。

 見開いた瞳が見つめる先、嬉々として俺の顔を見つめるハイジちゃんの姿があった。困惑を隠せずに狼狽えるコジマちゃんの姿があった。

 二人の姿を網膜に収めて、俺は絶頂を迎えた。

 過去、これほど心地良い射精があっただろうか。

 いいやない。ないな。

「いくぅうううううううううううううううっ!」

 大声を上げて、俺は果てた。

 あまりに気持ち良かった為か、俺の腰がガクガク、震えるに応じて、チンコがカップ麺の容器から抜けた。ちょうど引き上げられたタイミングであった点も大きい。

 結果、容器からこぼれた性器は、本来であれば容器の中へ収める筈の精液を、しかし、これを手にした相手に飛ばした。

「あっ……」

 デュクデュク。

 尿道を迫り上がった精液は、目指す先、ハイジちゃんの顔に命中した。

 おでこから顎まで、溜めに溜めたザーメンは、彼女の顔を白濁に汚した。

「ちょっと、なに、これ」

「あぁ、ハイジちゃんに顔射とか、俺、もう死んでもいい……」

 他の誰でもない、俺の精液に汚れたハイジちゃんの可愛らしい顔。その姿を目の当たりとして、俺は心の底から満足を得ていた。凄く嬉しかった、

「ちょ、ちょっとハイジっ!」

 コジマちゃんが慌てた様子でティッシュを取りに走る。

 対して、ハイジちゃんは。

「いつ私の顔に出して良いと言ったかな? ねぇ?」

「言われてないですっ! でも、嬉しいですッ! ありがとうございます!」

「これは罰が必要だねー」

 精液まみれの顔が、それでも笑顔に歪む。

 彼女は手にしたカップ麺の、残されたフィルムを剥いでゆく。本来であれば、湯を入れて三分後に取り除くはずのフィルムである。

 そして、何を考えたのか、自らの顔に付着した精液を指先に集めては、容器の中へと、べちゃり、べちゃり、かき集めてゆく。

 例え一滴であっても、決して漏らすことのないようにと。

 やがて一頻りを集め終えたところで、彼女は手にしたカップ麺の容器をこちらへ突き出した。両の手足を縛られたままの俺に向かってだ。

「はい」

「……え?」

「自分が出したものなんだから、自分で処理しないと駄目だよねぇ?」

「あ、いや、そ、それは、あのっ……」

 流石の俺も食ザーは未知の領域だ。しかも自分の。

 だがしかし、正面に座る彼女は有無を言わさぬ態度で続ける。

「はい、食べて?」

「いや、でも、むしろそれは俺よりハイジちゃんにプレゼント……」

「もしも食べなかったら、二度と口を利いてあげないよ? 私もお姉ちゃんも」

「…………」

 そう言われてしまったら、もう、食べるしかないじゃないですか。ハイジちゃんとコジマちゃん。二人とお話ができないなんて、そんなの死んだも同然だ。

 だったら、自分の精子くらい、なんてことないね。

 ザー汁味のカップ麺とか画期的じゃん。淫乱女まっしぐら。

「い、頂きますッ! いただきますぅうううううううううううう!」

「はぁい、私が食べさせてあげる」

 口元に容器を押しつけられる。

 俺は自ら口を開いて、その中身を受け入れた。無我夢中にすすり込んだ。一心不乱に、苦くて粘っこくて、なんかもう訳の分からない麺類をすすり込んだ。飲み込んだ。胃に落とした。

 ゴックン。

「あはっ! 見て見てお姉ちゃんッ! 自分のザーメン食べてるよぉっ!」

「ハイジ、貴方ちょっと、や、やり過ぎなんじゃ……」

「惨めだねぇッ!? 馬鹿だねぇっ!? 男としてのプライドなんて、きっと、毛の先ほどもないんだよっ! あはっ! 気持わるぅーいっ! 最低の男だねっ!」

 コジマちゃんからの諫めにも聞く耳を持たず、嬉々として笑い声を上げるハイジちゃん可愛い。彼女の悦ぶ顔を目の当たりにできるなら、俺はザーメンだろうと糞尿だろうと、なんだって口にするよハイジちゃん可愛い。

 あぁ、かわいい、かわいい、かわいいかわいい。

 なんて可愛いんだ。

「んぐっ!?」

 お酒の影響だろうか。

 何度目かの嚥下に応じて、喉に麺が詰まった。

 ザーメン付着の最高に不快な麺が詰まった。

 酸素が、酸素が。

 呼吸ができない。

 やばい、の、のどが、息がっ。

「んっ、んぐっ! んぐぅううっ!」

「見て見てお姉ちゃんっ! こいつ苦しんでるよっ!? あはははははっ! なにこれ、喉に詰まったのッ!? 自分のせーえき喉に詰まらせて死ぬのっ!? ばっかだよっ! ばかだよぉおっ! あはははははははははっ!」

「ちょ、ちょっとっ! 貴方も貴方で何をやっているのよっ! それ食べちゃっ……」

 二人の声が、段々と遠くなって行く。

 でも、その姿を視界に収めながら逝けるのならと、心中、呼吸のできない苦しさよりも、大好きな異性の姿を視界に収めて、心は満たされる。このまま死ぬことができたら、どれだけ幸せだろう。

 なんてことを考えながら、俺の意識は暗転した。

 エリーザベト姉妹、愛してる。

 真っ暗になった。