喰らえ、メテオストライク!

コージマ・エリーザベト・フォン・プファルツの場合 一

「お、お姉ちゃん、あれっ!」

 妹のハイジが、空の一点を指し示して言った。

 つい今し方、ガラス窓を粉砕して飛び出していった馬鹿共がいる。その馬鹿共が開けた大穴から覗く先、空に浮かぶのは巨大な隕石。地球にぶつかれば、都合数十億年は生物の進化が巻き戻されるだけの代物。

 これが、どうしたことか。

「なっ……」

 私とハイジが見つめている最中のこと、粉砕した。

「すごい……」

「え、えぇ……」

 間抜けな声を上げる妹に、これまた間抜け声に同意するしかない姉が私だ。

 まるで内部に火薬でも仕込んで爆発させたよう。

 歪な球形を取っていたそれが、ドドン、轟音と共に崩壊した。相当の距離があるにも関わらず、崩壊の音は地上まで届けられた。腹を内側から震わせるような、とても大きな音だった。

「ほんとうに、こ、壊しちゃったよ……あの二人……」

 珍しくも素面からハイジが言う。

「しかも破片がっ……」

 私たちの見つめる先、砕かれた隕石の破片が、まるで地球の引力に反発するよう、段々と遠ざかってゆく。なにをどうしたら、幾万、幾億と散った岩石の欠片を、空気も何も無い空間に飛ばすことができるのか。

 まるで理解が出来なかった。

 ただ事実として、その光景は空の一端に繰り広げられていた。恐らく、このミラクルを目の当たりとしているのは、私たちに限らないだろう。いよいよ迎えた最後の瞬間。まさかのどんでん返しである。

「凄い……」

「え、ええ、本当に砕いて、しまったわね……」

 全身が震えるのを感じた。

 こんなことが可能なのかと、芯の滾る感覚を覚えた。

 知識としては知っていた原初の鬼。

 鬼という名前の鬼。

 私やハイジのような吸血鬼は、その亜種に過ぎない。

 鬼が鬼と呼ばれるに至った理由を空に見つけて、私は見惚れていた。

「もしかして、私たち、助かったのかな……」

「ええ、もしかしなくても、助かったような気がするわ」

 相当の力が加えられたのだろう。砕かれた破片は、見る見るうちに空に溶けて見えなくなる。かなりの速度で地球から遠ざかっているのだろう。あれだけ巨大であった隕石の、けれど、僅か一欠片すら、早々に見えなくなった。

 これを私とハイジとは、呆然と眺める限りだった。

「千年ちゃんって……」

 ボソリ、ハイジが呟いた。

 これに私は推測で答える。

「私や貴方の大先輩じゃないかしら?」

「大先輩?」

 キョトンと首を傾げてくれる我が妹。

 ただ、その問い掛けに答える気にはなれなくて、私は延々と空を眺めていた。