喰らえ、メテオストライク!

コージマ・エリーザベト・フォン・プファルツの場合 二

 千年の力の源が人間の負の感情だとすれば、その暴走を止める為にやるべきことは一つしかない。早々にこれからの予定は決定された。私は妹のハイジを連れて、報道各局や大手メディア、各国の大使館を駆け足に巡る。

 急がなければならない。

 あの変態も長くは持たないだろう。

 始祖の鬼を相手に、あそこまで堂々と立ち回っている時点で、十分に奇跡だ。幾ら力の出所が同じとは言え、その胆力は素直に尊敬する。私など気配に当てられた時点で動けなかったのだから。

 下着も普通に湿っている。

「お、お姉ちゃん! あっち! あっちだって!」

「分かったわ!」

 交通機関は完全に麻痺していた。

 なので今は自身の足により駆けてのこと。こういうときは吸血鬼としての肉体がありがたい。手狭い都内ならば、下手に自動車へ乗るよりも早く移動できる。

 市井の混乱を避けて、建物の屋根や屋上を足場として移動する。

「あった、あれっ! あれがそうだって!」

 端末の地図を片手に案内をしてくれるハイジ。

 他方、私は彼女の後を追いながら、同じく端末を片手に通話を入れる。片っ端から連絡を掛けて、状況の説明を続ける。端末に専用線を引いておいて良かった。相手を選んでコールすれば、繋がるところには繋がる。

 もちろん、どこもかしこも混乱は著しい様子で、まともに取り合ってくれる相手は少ない。そもそも連絡が付かない方が多い。末端のみならず、上層部までもが最後の乱痴気騒ぎに興じているのだろう。

 唯一、状況を把握しているのは、確かな観測情報を持っている諸機関。

 しかしながら、それを世間に訴える術が失われつつある昨今、状況は芳しくない。頭上に隕石の崩れる様子を目の当たりとした人間は、まだ良い。問題はこれを目撃しない圧倒的大多数の人間だ。

 恐らくアジア圏を離れては、目で見て確認することも不可能だったろう。

「ここは私が向かうわ! ハイジは隣へお願い」

「りょーかい!」

 今の私たちが行うべくは、如何に早く状況を収拾するか。

 幸いにして通信インフラは死んでいない。

 急げば間に合う筈だと、自らに言い聞かせて、足を急がせた。

 あの二人には、特に、あの変態には、まだ死んで欲しくない。