喰らえ、メテオストライク!

アーデルハイト・エリーザベト・フォン・プファルツの場合 二

 何となく状況が掴めてきた。

 生粋の鬼なのだという千年ちゃんの内に溜まった面倒な色々。今はこれをできる限り早く取り除くことが、求められているんだろう。

 であれば、隕石落下のお知らせを撤回することが一番だ。

 もちろん全てが元通りという訳にはいかない。

 決して少なくない遺恨を各所に残すだろう。

 今朝にテレビを眺めた限りでは、国の一つや二つは潰れてもおかしくない混乱具合だった。この国にしても、果たして上手く立ち直れるのかどうか、怪しいところ。

 ただ、そういった今後のあれやこれやは全て忘れて、今は身体を動かす限り。

 手にした端末に表示される地図情報。

 目当てとするのは、この国の大手通信メディア。

 その所在を確認して、私は声も大きく吠えた。

「お、お姉ちゃん! あっち! あっちだって!」

「分かったわ!」

 交通機関は完全に麻痺している。おかげで自動車は使えない。ヘリも自宅に放置なので、自らの足に走り回る羽目になった。

 こうしてお姉ちゃんと一緒に走り回るのは、何年ぶりだろうか。燦々と注ぐ陽光がひたすらに熱い。顔も脇も胸も汗に濡れてびっしょりだ。

 ただ、不思議と胸が昂揚している。

「ここは私が向かうわ! ハイジは隣へお願い」

 隣には何があったろう。

 地図に確認したところ、すぐ近くに某国の大使館があった。

 なるほど。

「りょーかい!」

 こうした私たち姉妹の行動に、どれだけの意味があるかは分からない。

 地球はなんだかんだで広いのだ。

 一度散ってしまった情報を撤回するのに、どれほどの時間が掛かるのか。もしかしたら、これは良い社会実験なのかも知れない。過去、これほどまでに大規模かつ火急な人員統制があったろうか。

 なんて、今はそんなことを考えている場合じゃ無いか。

「急ぐわよっ!」

「分かってるよぉっ!」

 軽い調子に答えて、けれど、私は全力で駆けた。

 なんとなく、なんとなくだけど、あの童貞には死んで欲しくない。

 きっと、お姉ちゃんも同じことを考えていることだろう。