喰らえ、メテオストライク!

コージマ・エリーザベト・フォン・プファルツの場合 三

 やれるだけのことをやって、私は二人の下へと戻った。

 周辺の建物は大半が倒壊しており、本来であればコンクリートに舗装されて平坦な筈の地面も、凸凹で平らなところを見つけることが難しいほど。まるで大きな震災でも起こったような有様だった。

 ただ、そうした酷い景観を晒す一帯にありながら、争いの場は静かになっていた。

「ちょ、ちょっとっ……」

 他へ移動してしまったのだろうか。

 焦りが増した。

 もしそうだとしたら、どこへ移動したのか。大きく場所を変えていたら、非常に困ったこととなる。生身で大気圏を脱出するような化け物が相手だ。人を使える平時ならまだしも、この混乱の只中、私の足だけで二人を探し出すなど、ほぼ不可能だろう。

 崩壊した建物の瓦礫に埋もれて見通しの悪くなった近隣。どうか、この近くに居て欲しいと願っては目を凝らす。私の他、一帯には人や化け物の気配が感じられない。もしも居るなら、すぐに見つかりそうなものだが。

「一体どこに行ったのよっ……」

 どこへとも走り出したくなる気持ちを抑えて、しばらくを歩き回る。

 すると、それは見つかった。

「あっ……」

 数十メートル先の地点、一際大きなクレーター。

 その中心に人の姿があった。

 二人、抱き合う形で立っている。

 ピクリとも動かないまま。

「ど、どうなっているのよっ!?」

 私は駆けた。クレーターの中心、恐らくは知り合いだろう人影の下へ、全力疾走だ。こっちが死に物狂いであれやこれやと手を尽していたというのに、あの変態共は何を盛ってくれているのか。

 少なからず苛立ちを覚えて。

 ただ、その下へ辿り着いて、私は自らの推測が誤りであると知る。

「ちょっと、貴方たちっ! 天下の往来で何をやってっ……」

 近づいて気付いたのだ。

 千年の腕が、彼の腹部を貫いていた。

 これに構わず、彼は千年を抱きしめていた。

 そうした姿勢のまま、二人は静かになっていた。

 立ったままなのに。

 まるで彫像にでもなってしまったよう。

「……ちょっと」

 死んでいるのかと思って、私は慌てた。

 ただ、彼と彼女の肉体には、僅かばかり治癒の進みが見られた。速度は過去に垣間見たそれと比較して、かなり遅い。だが、確実に進んでいる。

 これを確認して、私はホッと溜息を一つ。どうやら二人とも死んではいないらしい。であれば、相手は始祖の鬼だ。大丈夫だろう。

「まったく、驚かせないで欲しいわね……」

 誰に言うでもなく呟いて、ほぅと緊張に強ばった肩を落とす。

 良かった。

 本当に良かった。

 どうやら、事態は無事に収拾した様子だった。